「一審判決が改正前の行為時法を適用しなかつたのは憲法三一条違反」との主張に対し、実質は法令違反の主張で不適法としたうえ、括弧書で、同判決が行為時法を適用したことは判文上明らかである旨の判示を加えられた事例
判旨
供述調書の任意性については、記録上の証跡に照らして判断されるべきであり、任意性を疑うべき証跡が認められない場合には、証拠能力が認められる。
問題の所在(論点)
供述調書の任意性を疑うべき事情が認められない場合に、その証拠能力を否定し、または憲法31条違反の違憲事由とすることができるか。
規範
刑訴法において供述調書の証拠能力が認められるためには、その供述が任意になされたものであることを要する。任意性の判断にあたっては、記録上の諸事跡を総合し、不当な圧迫や虚偽の誘致等の疑いがあるか否かにより決するべきである。
重要事実
被告人が業務上過失致死傷罪に問われた事案において、第一審判決では昭和43年法律61号による改正前の刑法211条前段が適用された。弁護人は、供述調書の任意性を欠くとして憲法31条違反や法令違反を主張し、上告を申し立てた。
あてはめ
本件における供述調書について記録を精査しても、自白の任意性を疑うべき具体的な証跡は認められない。したがって、弁護人が主張する任意性の欠如という事実は存在せず、実質的には単なる法令違反ないし事実誤認の主張にすぎないといえる。
結論
本件供述調書の任意性には疑いがないため、証拠能力を認めた判断に誤りはなく、憲法違反や適法な上告理由にはあたらない。
実務上の射程
自白や供述調書の任意性争いにおいて、具体的な証跡(拷問、誘導、不当な長期拘束等)が示されない限り、裁判所は記録に基づき任意性を肯定する。実務上は、任意性を争う側が具体的な不適正事由を摘示する必要があることを示唆している。
事件番号: 昭和46(あ)2738 / 裁判年月日: 昭和47年7月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所による証人尋問の申請の採否は、裁判所の自由裁量に委ねられており、その裁量の限界を超えない限り、憲法37条2項後段に違反しない。 第1 事案の概要:被告人の弁護人が原審(控訴審)において証人尋問の申請を行ったが、原審はこれを採用しなかった。これに対し弁護人は、証人採用を却下したことが裁判所に与…