一 原判示自体において原判決の結論に影響のないことが明らかな憲法解釈を非難する違憲の主張は、適法な上告理由とならない(最高裁判所昭和三九年一二月三日第二小法廷決定・刑集一八巻一〇号六九八頁参照)。 二 原判決が司法巡査作成の実況見分調書から認められる事実として判示するところによると、昭和四五年一〇月二四日午後八時五〇分頃普通乗用自動車が小牧市大字ab番地先道路の歩道の上に乗り上げており、そのかたわらに被告人がいたというのであるから、右実況見分調書は、被告人の自白とあいまって第一審判示の罪となるべき事実第一(注一)を認定するに足りるものである(注二)。 三 (注一)第一審判示罪となるべき事実第一は、「被告人は、公安委員会の運転免許を受けないで、昭和四五年一〇月二四日午後八時四五分頃、小牧市大字ab番地先路上において、普通乗用車を運転したものである。」というものである。 四 (注二)上告趣意は、右(注一)掲記の事実のうち「運転した」との点について自白の補強証拠がない旨主張し、判旨は、これに答えたものである(実況見分調書の内容上それが「無免許」の点についての自白の補強証拠となることは、争いがなかったものである。)。
一 原判示自体において原判決の結論に影響のないことが明らかな憲法解釈を非難する上告趣意の適否 二 道路交通法違反(無免許運転)罪につき自白の補強証拠があるとされた事例
刑訴法405条,刑訴法319条2項,道路交通法118条1項1号
判旨
被告人の自白の補強証拠として、犯行直後の現場状況を示す実況見分調書が存在する場合、自白と相まって罪となるべき事実を認定するに足りるため、憲法38条3項の補強証拠として十分である。
問題の所在(論点)
自白の補強証拠として、犯行現場における車両の状況および被告人の所在を示す実況見分調書は、憲法38条3項の要求する「補強証拠」として十分といえるか。
規範
憲法38条3項にいう補強証拠は、自白が架空のものでないことを保障しうる程度のものであれば足り、自白と相まって犯罪事実(客観的な罪となるべき事実)を認定できるものであれば、その全部を直接裏付ける必要はない。
重要事実
被告人が自動車の運転に関わる罪に問われた事案において、第一審判示の罪となるべき事実に関し、被告人の自白が存在した。補強証拠として、司法巡査が作成した実況見分調書があり、そこには「昭和45年10月24日午後8時50分頃、普通乗用自動車が道路の歩道上に乗り上げており、そのかたわらに被告人がいた」という事実が記載されていた。弁護人は、当該実況見分調書は補強証拠として不十分であり、憲法38条3項に違反すると主張した。
あてはめ
本件実況見分調書によれば、特定の時間および場所において、自動車が歩道に乗り上げるという異常な状況が発生しており、かつその直後に被告人が現場に存在していた事実が認められる。この事実は、被告人が当該車両を運転して事故を起こしたという自白の内容が、単なる架空の虚偽自白ではないことを強く裏付けるものである。したがって、当該実況見分調書は、被告人の自白と相まって、罪となるべき事実を認定するに足りる補強証拠であると評価できる。
結論
本件実況見分調書を補強証拠として被告人を罪に問うことは、憲法38条3項に違反しない。
実務上の射程
自白の補強法則に関する基本判例の一つであり、実況見分調書が客観的状況(車両の残存状況等)を証明するものである限り、補強証拠としての適格性を有することを示す。答案上では、補強証拠の程度について「自白が真実であることを保障しうる程度」という規範を立てた後のあてはめの指標として、現場の客観的状況と被告人の近接性を重視する際に引用できる。
事件番号: 昭和43(あ)718 / 裁判年月日: 昭和46年3月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】無免許運転の罪における「免許を受けていないこと」という事実は、被告人の自白のみでは証明できず、憲法38条3項及び刑訴法319条2項に基づき補強証拠を要するが、第三者の供述調書等があれば補強証拠として十分である。 第1 事案の概要:被告人が普通自動車の運転免許を有しない状態で自動車を運転したとして、…
事件番号: 昭和28(あ)5051 / 裁判年月日: 昭和29年3月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白が存在する場合、実況見分書等の客観的証拠が自白の真実性を担保する補強証拠となり得る。自白とこれら補強証拠を総合して犯罪事実を認定することは、憲法上の証拠法則に反しない。 第1 事案の概要:被告人が犯行を認める自白をしていた。第一審判決は、この自白に加えて、犯行現場や状況を記録した実況見…
事件番号: 昭和47(あ)1876 / 裁判年月日: 昭和48年6月5日 / 結論: 棄却
実況見分調書を刑訴法三二一条三項により証拠に採用したときは、その調書に記載された実況見分の結果を証拠とする趣旨であり、立会人の指示説明をその内容にそう事実認定の証拠として用いる趣旨ではない。
事件番号: 昭和42(あ)2813 / 裁判年月日: 昭和43年12月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自白にかかる犯罪構成事実の全部にわたって、いちいち補強証拠を必要とするものではなく、自白だけで認定しても憲法38条3項に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は、左前方を同一方向に進行している自転車を自動車で追い越そうとした。その際、先行自転車の避譲を確認せず、安全な間隔を保つべき注意義務を怠った…