判旨
証人が体験した事実そのもの、または体験した事実に基づいて推測した事項に関する供述は、単なる意見の表明ではなく、証拠能力を有する。
問題の所在(論点)
証人の供述が、単なる「意見」の表明にすぎないのか、それとも「体験した事実(及びそれに基づく推測)」として証拠能力が認められるのか。刑事訴訟法における証拠能力の限界が問題となった。
規範
証言が証拠として許容されるためには、それが証人の個人的な意見の表明にとどまらず、自ら直接体験(実験)した事実、またはその体験した事実に基づき合理的に推測された事項についての供述であることを要する。
重要事実
刑事被告事件において、被害者Aが証人として供述を行った。この供述について、弁護人は「証人の意見の表示にすぎない部分を証拠として採用した」として、判例違反および証拠法則違反を理由に上告を申し立てた。原審は、当該供述のうち証人が実際に体験した事実およびその事実に基づく推測事項を事実認定の資料としていた。
あてはめ
最高裁は、原審が証拠として採用したのは証人が「実験(体験)した事実」または「実験した事実によつて推測した事項」についての供述部分であると認定した。これは、単なる抽象的な意見や主観的な感想の表明とは区別されるものであり、事実認定の資料とすることに違法はないと判断した。
結論
本件証言は単なる意見の表明ではなく、体験した事実等に基づくものであるため、証拠能力が認められ、上告は棄却された。
実務上の射程
伝聞法則や証拠法則において「意見の排除」が議論される際、どこまでが「意見」でどこまでが「事実(又は許容される推測)」かを分ける基準として有用である。答案上は、供述内容が証人の五感を通じて得られた具体的経験に裏打ちされているかを検討する際の根拠となる。
事件番号: 昭和37(あ)1690 / 裁判年月日: 昭和40年10月27日 / 結論: その他
道路交通取締法第二四条第一項、同法施行令第六七条所定の救護等の措置義務又は報告義務に違反するものとして、操縦者等に対し刑事責任を負わしめるのは、被害者の殺傷の事実又は物の損壊の事実が発生し、しかも操縦者等がこれらの事実を未必的にしろ認識した場合に限られるものと解するのを相当とする。
事件番号: 昭和46(あ)192 / 裁判年月日: 昭和46年3月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条2項前段は、被告人が公判審理において証人に尋問し反対尋問する機会を保障するものであり、公判外の供述を証拠とすることを一律に禁止するものではない。 第1 事案の概要:被告人が刑事被告事件において有罪判決を受けた際、公判期日外における第三者の供述等(伝聞証拠)が証拠として採用されたことに対し…
事件番号: 昭和46(あ)2370 / 裁判年月日: 昭和47年6月2日 / 結論: 棄却
本件「酒酔い鑑識カード」(判決別紙参照)のうち「化学判定」欄および被疑者の言語、動作、酒臭、外貌、態度等の外部的状態に関する記載のある欄の各記載は、いずれも刑訴法三二一条三項の「司法警察職員の検証の結果を記載した書面」にあたり、被疑者との問答の記載のある欄ならびに「事故事件の場合」の題下の「飲酒日時」および「飲酒動機」…
事件番号: 昭和50(あ)1355 / 裁判年月日: 昭和50年9月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の供述が任意になされたものであるか否かは、取調べの状況や諸般の事情を総合的に考慮して判断されるべきであり、本件においては原審の任意性肯定の判断を維持した。 第1 事案の概要:被告人が行った供述(自白)の任意性について争われた事案。弁護人は、当該供述の任意性に疑いがあるとして違憲及び判例違反を…
事件番号: 昭和47(あ)1876 / 裁判年月日: 昭和48年6月5日 / 結論: 棄却
実況見分調書を刑訴法三二一条三項により証拠に採用したときは、その調書に記載された実況見分の結果を証拠とする趣旨であり、立会人の指示説明をその内容にそう事実認定の証拠として用いる趣旨ではない。