本件A株式会社は経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律第二条別表乙号三〇にいう「地方鉄道法第十二条ノ規定ニ依ル免許ヲ受ケ地方鉄道業ヲ営ム者」であるが、そのような会社が、線路の一部を電化するためその架線工事を請負わせることは、右会社の本来の事業たる運輸事業自体とはいえないが、前記法律第二条の適用については、右運輸事業を行なうために必要な関係にある事務であると解するのが相当であり、右会社の役職員がこのような事務を担当している場合には、その事務は右法律第二条のいう職務に当るというべきである。
経済関係罰則ノ整備ニ関する法律第二条にいう「其ノ職務」にあたるとされた事例。
経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律2条,経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律別表乙号30
判旨
経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律2条の「其ノ職務」とは、本来の独占的・統制的業務そのものに限らず、当該業務を行うために必要な関係にある事務をも含む。何がこれに当たるかは、当該業務の公共的性質に鑑み、運営の公正を確保するという法の目的に照らし、社会通念によって決すべきである。
問題の所在(論点)
経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律2条にいう「其ノ職務」の範囲、特に、本来の独占的・統制的事業そのものではない付随的事務がこれに含まれるか。
規範
「其ノ職務」とは、会社等の役職員の職務であれば無制限にすべてを含むものではないが、本来の独占的・統制的性質をもつ業務に局限されるものでもない。すなわち、本来の事業または業務を行うために「必要な関係にある事務」をも含む。その具体的な範囲は、独占的・統制的業務の公共的性質に鑑み、その運営の公正を確保するという法意に照らし、個別の事案ごとに社会通念に従って決定されるべきである。
重要事実
被告人らは、地方鉄道法に基づき免許を受けて地方鉄道業を営むA株式会社の役職員であった。被告人らは、同社の線路の一部を電化するための架線工事を請け負わせる事務に関して、賄賂を収受等したとして、経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律2条違反(収賄)に問われた。弁護人は、当該架線工事の請負事務は同条の「職務」に当たらないと主張して上告した。
事件番号: 昭和28(あ)4381 / 裁判年月日: 昭和30年5月10日 / 結論: 破棄差戻
経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律第二条にいう「其ノ職務」とは、同条の定める会社、組合またはこれらに準ずるものの役職員の職務であつて同条のいう事業または業務にかかわりなく、すべてを含むと解すべきではないが、本来の独占的または統制的性質をもつ事務に局限すべきでなく、本来の事業または業務を行うために必要な関係にある事務をも含む…
あてはめ
A社は「地方鉄道業を営む者」であり、その事業は高度な公共性を有する。同社が線路の電化工事を請け負わせる事務において賄賂が行われれば、本来の事業である地方鉄道事業そのものの運営に好ましくない影響を及ぼし、公共の利益を害する危険がある。したがって、架線工事の請負事務は、同社の本来の運輸事業自体ではないものの、これを行うために「必要な関係にある事務」に当たると評価でき、同条の「職務」に該当する。
結論
本件架線工事の請負事務は、経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律2条の「職務」に含まれる。したがって、被告人らに対する同条違反の成立を認めた原判決は正当である。
実務上の射程
本判決は、贈収賄罪における「職務」の範囲について、本来の業務そのものだけでなく、それと密接に関連し業務遂行に必要とされる事務まで広く含むとする「必要関係説」を維持したものである。公共的事務の公正維持という保護法益から、具体的妥当性を図る判断枠組みとして重要である。
事件番号: 昭和28(あ)4064 / 裁判年月日: 昭和31年3月9日 / 結論: 破棄差戻
一 原判決が高等裁判所の判例と相反する判断をし、これを理由として上告された場合に、最高裁判所が先例たる判例及び原判決のいずれとも異なる見解に立ち原判決を維持するをえないときは、原判決は破棄すべきものである。 二 当裁判所判例(昭和二八年(あ)第四三八一号同三〇年五月一〇日第三小法廷判決、昭和二八年(あ)第二九〇九号、同…
事件番号: 昭和28(あ)2909 / 裁判年月日: 昭和30年7月5日 / 結論: 棄却
一 「経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律」別表乙号第二九号にあたるA配電株式会社(現在B電力株式会社)資材課員の職務に関し賄賂を供与した罪の訴因において、「機器の修理契約その代金支払手続等の事務」とある職員の職務内容を「変圧器等古機器の払下」と認定するには訴因変更の手続を要しない。 二 前記会社の資材課長の職務である「機器…
事件番号: 昭和28(あ)5626 / 裁判年月日: 昭和31年2月29日 / 結論: 棄却
経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律別表乙号二四の金融機関たる銀行の為す貸付業務は、金融緊急措置令第六条同施行規則第一三条および金融機関資金融通準則に基いて行われるものであつて、右法律第二条の経済の統制を目的とする法令により行う「統制に関する業務」である。
事件番号: 昭和39(あ)1336 / 裁判年月日: 昭和40年9月21日 / 結論: 棄却
銀行支店長代理が架空の定期預金証書を作成し交付することは、経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律第二条にいわゆる「職務に関する行為」に当る。