一 原判決が高等裁判所の判例と相反する判断をし、これを理由として上告された場合に、最高裁判所が先例たる判例及び原判決のいずれとも異なる見解に立ち原判決を維持するをえないときは、原判決は破棄すべきものである。 二 当裁判所判例(昭和二八年(あ)第四三八一号同三〇年五月一〇日第三小法廷判決、昭和二八年(あ)第二九〇九号、同三〇年七月五日第三小法廷判決)は、「経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律」二条が、同条の定める会社、組合またはこれらに準ずるものについて、その事業または業務を限定するところにかんがみるときは、同条にいう役職員の職務とは、その職務であれば右にいう事業または業務にかかわりなく、すべて含むと解すべきでないことはいうまでもないが、他面、立法の趣旨がこれらの事業または業務の公共的性質に注目して本条の収賄罪を設けたことを考え合わせると、これを厳に本来の独占的または統制的性質をもつ事務に局限すべきではなく、本来の事業または業務を行うために必要な関係にある事務をも含むべきものとしており、いまこれを変更すべき理由をみない。 三 本件A株式会社が経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律二条別表乙号三〇にいう「地方鉄道法第十二条ノ規定ニ依ル免許ヲ受ケ地方鉄道業ヲ営ム者」である以上、同会社が線路の一部を電化するに当り、その架線工事を請負わせことは、その会社の本来の事業たる運輸事業自体とはいえないが、これを行うために必要な関係にある事務であること明らかである。従つて右会社の役職員がこのような事務を担当している場合には、その事務は右法律二条にいう職務に当るものと解しなければならない。
一 高等裁判所の判例と相反する判断をした原判決に対する上告と、上告申立後の最高裁判所が先例たる判例及び原判決のいずれをも維持するをえない場合の措置 二 経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律第二条にいう「其ノ職務」の意義 三 経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律第二条にいう「其ノ職務」にあたる一事例
刑訴法405条3号,刑訴法410条,刑訴法413条本文,経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律2条別表乙号,経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律2条,経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律5条1項
判旨
経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律2条における「職務」とは、公共的性質に鑑み、本来の独占的・統制的性質を持つ事務に局限されず、本来の事業を行うために必要な関係にある事務をも含む。
問題の所在(論点)
経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律2条の「職務」の範囲は、本来の独占的・統制的性質を持つ事務に限定されるか、あるいはそれを行うために必要な関連事務まで含まれるか。
規範
事件番号: 昭和38(あ)457 / 裁判年月日: 昭和39年6月4日 / 結論: 棄却
本件A株式会社は経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律第二条別表乙号三〇にいう「地方鉄道法第十二条ノ規定ニ依ル免許ヲ受ケ地方鉄道業ヲ営ム者」であるが、そのような会社が、線路の一部を電化するためその架線工事を請負わせることは、右会社の本来の事業たる運輸事業自体とはいえないが、前記法律第二条の適用については、右運輸事業を行なうため…
経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律2条の収賄罪における役職員の「職務」とは、当該団体の事業または業務の公共的性質に鑑み、厳に本来の独占的または統制的性質をもつ事務に局限すべきではない。本来の事業または業務を行うために必要な関係にある事務をも含むと解すべきである。
重要事実
被告人らは、地方鉄道法に基づく免許を受けて地方鉄道業を営むA株式会社(同法2条別表乙号30に該当)の役職員であった。同社が線路の一部を電化するにあたり、その架線工事を請け負わせる事務に関して賄賂の授受が行われた。原審は、当該事務は独占的・統制的性質を持つ本来の事業に関する事務ではないとして賄賂罪の成立を否定した。
あてはめ
A株式会社は「地方鉄道法第十二条ノ規定ニ依ル免許ヲ受ケ地方鉄道業ヲ営ム者」に該当し、その事業には公共的性質が認められる。本件の架線工事の請負事務は、同社の本来の事業である運輸事業そのものではない。しかし、鉄道の電化は運輸事業を遂行する上で不可欠な準備行為であり、本来の事業を行うために必要な関係にある事務であるといえる。したがって、当該事務を担当する役職員の行為は、同法2条にいう「職務」に該当すると評価される。
結論
架線工事の請負事務は同法2条の「職務」に該当する。したがって、これに関し賄賂を収受した被告人らの行為には賄賂罪が成立し得るため、無罪とした原判決は破棄を免れない。
実務上の射程
公務員以外の役職員に賄賂罪を適用する特別法において、「職務」を当該団体の本来の目的たる事務そのものに限定せず、付随的・準備的な関連事務まで広く認めた点に射程がある。刑法上の賄賂罪における「職務」概念の拡張的な解釈(密接関連事務を含む)と同様の論理構成をとる際の指標となる。
事件番号: 昭和28(あ)4381 / 裁判年月日: 昭和30年5月10日 / 結論: 破棄差戻
経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律第二条にいう「其ノ職務」とは、同条の定める会社、組合またはこれらに準ずるものの役職員の職務であつて同条のいう事業または業務にかかわりなく、すべてを含むと解すべきではないが、本来の独占的または統制的性質をもつ事務に局限すべきでなく、本来の事業または業務を行うために必要な関係にある事務をも含む…
事件番号: 昭和28(あ)2909 / 裁判年月日: 昭和30年7月5日 / 結論: 棄却
一 「経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律」別表乙号第二九号にあたるA配電株式会社(現在B電力株式会社)資材課員の職務に関し賄賂を供与した罪の訴因において、「機器の修理契約その代金支払手続等の事務」とある職員の職務内容を「変圧器等古機器の払下」と認定するには訴因変更の手続を要しない。 二 前記会社の資材課長の職務である「機器…
事件番号: 昭和28(あ)5626 / 裁判年月日: 昭和31年2月29日 / 結論: 棄却
経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律別表乙号二四の金融機関たる銀行の為す貸付業務は、金融緊急措置令第六条同施行規則第一三条および金融機関資金融通準則に基いて行われるものであつて、右法律第二条の経済の統制を目的とする法令により行う「統制に関する業務」である。
事件番号: 昭和39(あ)1336 / 裁判年月日: 昭和40年9月21日 / 結論: 棄却
銀行支店長代理が架空の定期預金証書を作成し交付することは、経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律第二条にいわゆる「職務に関する行為」に当る。