銀行支店長代理が架空の定期預金証書を作成し交付することは、経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律第二条にいわゆる「職務に関する行為」に当る。
経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律第二条にいわゆる「職務に関する行為」に当るとされた事例。
経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律(昭和38年法律159号による改正前のもの)2条,経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律(昭和38年法律159号による改正前のもの)別表乙号24号
判旨
経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律2条にいう「職務ニ関シ」とは、当該業務そのものではなくとも、これに関連してなされた不正行為を含むと解すべきである。銀行支店長代理による架空の定期預金証書の作成交付は、銀行の信用を貸与する行為として「職務ニ関シ」なされたものに当たる。
問題の所在(論点)
経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律2条(役職員の収賄等の罪)の構成要件である「職務ニ関シ」の意義が問題となる。特に、本来の業務そのものではない架空の証書作成・交付という不正行為が、職務関連性を有するか否かが争点となった。
規範
経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律2条における「職務ニ関シ」とは、当該役職員が本来担当すべき業務そのものを遂行する場合に限られない。当該業務と密接に関連し、その社会的地位や職務上の権限を利用して行われる不正行為をも含むものと解される。具体的には、その行為が実質的に当該機関の信用を利用・貸与する性質を有する場合には、関連性が認められる。
重要事実
銀行の支店長代理であった被告人は、真実の預入がないにもかかわらず、架空の定期預金証書を作成し、これを相手方に交付した。弁護人は、このような架空の証書作成交付行為は銀行の正規の貸付業務等には該当せず、同法2条の「職務ニ関シ」たものとはいえないと主張して上告した。
事件番号: 昭和28(あ)5626 / 裁判年月日: 昭和31年2月29日 / 結論: 棄却
経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律別表乙号二四の金融機関たる銀行の為す貸付業務は、金融緊急措置令第六条同施行規則第一三条および金融機関資金融通準則に基いて行われるものであつて、右法律第二条の経済の統制を目的とする法令により行う「統制に関する業務」である。
あてはめ
被告人は銀行支店長代理という地位にあり、定期預金証書の発行という銀行業務の外形を整えた行為を行っている。架空の証書であっても、これを交付する行為は、銀行の信用を背景にそれを貸与する性質を持つものである。したがって、たとえ当該行為が銀行本来の適法な貸付業務そのものではなかったとしても、支店長代理としての職務に関連してなされた不正行為であると評価するのが相当である。
結論
被告人の行為は「職務ニ関シ」なされたものと認められ、経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律2条が成立する。上告棄却。
実務上の射程
本判決は「職務」の範囲を本来の事務に限定せず、職務に関連する不正行為まで広く含める判断を示したものである。刑法上の収賄罪における「職務」の解釈(一般的職務権限)と同様に、職務と密接な関連性を有する行為であれば足りるとする考え方は、特別刑法における役員の忠実義務や公正な取引確保の文脈でも維持される。答案上は、職務権限の有無だけでなく、当該行為が組織の信用や権限を背景にしているかを検討する際に引用すべきである。
事件番号: 昭和31(あ)154 / 裁判年月日: 昭和33年9月12日 / 結論: 棄却
経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律第二条にいう「其ノ職務」とは、同条の定める会社、組合またはこれらに準ずるものの職務であれば、同条のいう事業または業務にかかわりなく、すべてを含むと解すべきではないが、本来の独占的または統制的性質をもつ業務に局限すべきでなく、本来の事業または業務を行うために必要な関係にある事務をも含むものと…
事件番号: 昭和28(あ)2909 / 裁判年月日: 昭和30年7月5日 / 結論: 棄却
一 「経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律」別表乙号第二九号にあたるA配電株式会社(現在B電力株式会社)資材課員の職務に関し賄賂を供与した罪の訴因において、「機器の修理契約その代金支払手続等の事務」とある職員の職務内容を「変圧器等古機器の払下」と認定するには訴因変更の手続を要しない。 二 前記会社の資材課長の職務である「機器…
事件番号: 昭和37(あ)555 / 裁判年月日: 昭和37年9月20日 / 結論: 棄却
原判決が、本件相互銀行のなす貸付業務が、経済関係罰則の整備に関する法律第二条の経済の統制を目的とする法令により行う統制に関する業務であることは明らかであるとして、被告人らの本件行為に右法律第二条を適用したことを相当であると判示したのは正当である。
事件番号: 昭和38(あ)457 / 裁判年月日: 昭和39年6月4日 / 結論: 棄却
本件A株式会社は経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律第二条別表乙号三〇にいう「地方鉄道法第十二条ノ規定ニ依ル免許ヲ受ケ地方鉄道業ヲ営ム者」であるが、そのような会社が、線路の一部を電化するためその架線工事を請負わせることは、右会社の本来の事業たる運輸事業自体とはいえないが、前記法律第二条の適用については、右運輸事業を行なうため…