一 「経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律」別表乙号第二九号にあたるA配電株式会社(現在B電力株式会社)資材課員の職務に関し賄賂を供与した罪の訴因において、「機器の修理契約その代金支払手続等の事務」とある職員の職務内容を「変圧器等古機器の払下」と認定するには訴因変更の手続を要しない。 二 前記会社の資材課長の職務である「機器の修理契約その代金の支払手続等」および同課員の職務である「変圧器等古機器の払下」は前記法律第二条にいう役職員の職務に含まれるものと解するを相当とする。
一 訴因変更を要しない一事例 二 「経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律」第二条にいう「其ノ職務」にあたる一事例
経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律2条,経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律5条1項,刑訴法256条,刑訴法312条
判旨
「経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律」2条にいう役職員の職務は、独占的・統制的性質をもつ事務に限定されず、本来の事業を行うために必要な関係にある事務をも含む。
問題の所在(論点)
1. 公訴事実と認定事実で職務の具体的具体的内容が異なる場合に、訴因変更手続を要するか。 2. 「経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律」2条にいう「役職員の職務」の範囲。
規範
「経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律」2条に定める役職員の職務とは、同条の事業・業務に関わる全ての事務を含むわけではないが、当該事業等の公共的性質に鑑み、本来の独占的または統制的性質をもつ事務に局限すべきではない。本来の事業または業務を行うために必要な関係にある事務であれば、同条の職務に含まれると解するのが相当である。
重要事実
被告人は、配電事業(旧経済関係罰則法別表所定の事業)を営むA配電株式会社の職員Cらに対し、賄賂を供与したとして贈賄罪に問われた。公訴事実ではCの職務を「機器の修理契約・代金支払手続」としていたが、第一審判決は「変圧器等古機器の払下」と認定した。被告人側は、認定された職務が同法2条の職務に当たらないこと、および訴因変更手続を経ていない違法を主張して上告した。
事件番号: 昭和28(あ)4381 / 裁判年月日: 昭和30年5月10日 / 結論: 破棄差戻
経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律第二条にいう「其ノ職務」とは、同条の定める会社、組合またはこれらに準ずるものの役職員の職務であつて同条のいう事業または業務にかかわりなく、すべてを含むと解すべきではないが、本来の独占的または統制的性質をもつ事務に局限すべきでなく、本来の事業または業務を行うために必要な関係にある事務をも含む…
あてはめ
1. 公訴事実と判示事実は、特定の日時場所で特定会社職員の職務に関し賄賂を供与したという基本的点において一致しており、職務の具体的細部の相違は公訴事実の同一性を害さない。また、被告人の防御権行使に不当な影響を及ぼすとも認められないため、訴因変更は不要である。 2. A配電の職員が行う「機器の修理契約・代金支払手続」や「変圧器等古機器の払下」といった事務は、同社の本来の事業を遂行するために必要な関係にある事務といえる。したがって、これらは同法2条にいう職務に含まれる。
結論
1. 公訴事実の同一性の範囲内であり、防御権に不当な影響がない限り、訴因変更手続を経ずに職務の具体的細部を認定しても違法ではない。 2. 本来の業務に必要な関係にある事務である以上、贈賄罪の客体となる職務に該当する。
実務上の射程
特別刑法における「職務」の範囲について、単なる独占的・統制的権限の行使だけでなく、付随的な事務まで広く含むことを示した。また、訴因変更の要否判断において、贈賄の対象となる職務内容の微差は「基本的事実」の同一性を揺るがさず、防御権の観点から許容されるという実務上の準拠を示している。
事件番号: 昭和28(あ)4064 / 裁判年月日: 昭和31年3月9日 / 結論: 破棄差戻
一 原判決が高等裁判所の判例と相反する判断をし、これを理由として上告された場合に、最高裁判所が先例たる判例及び原判決のいずれとも異なる見解に立ち原判決を維持するをえないときは、原判決は破棄すべきものである。 二 当裁判所判例(昭和二八年(あ)第四三八一号同三〇年五月一〇日第三小法廷判決、昭和二八年(あ)第二九〇九号、同…
事件番号: 昭和38(あ)457 / 裁判年月日: 昭和39年6月4日 / 結論: 棄却
本件A株式会社は経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律第二条別表乙号三〇にいう「地方鉄道法第十二条ノ規定ニ依ル免許ヲ受ケ地方鉄道業ヲ営ム者」であるが、そのような会社が、線路の一部を電化するためその架線工事を請負わせることは、右会社の本来の事業たる運輸事業自体とはいえないが、前記法律第二条の適用については、右運輸事業を行なうため…
事件番号: 昭和39(あ)1336 / 裁判年月日: 昭和40年9月21日 / 結論: 棄却
銀行支店長代理が架空の定期預金証書を作成し交付することは、経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律第二条にいわゆる「職務に関する行為」に当る。
事件番号: 昭和28(あ)5626 / 裁判年月日: 昭和31年2月29日 / 結論: 棄却
経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律別表乙号二四の金融機関たる銀行の為す貸付業務は、金融緊急措置令第六条同施行規則第一三条および金融機関資金融通準則に基いて行われるものであつて、右法律第二条の経済の統制を目的とする法令により行う「統制に関する業務」である。