判旨
刑法27条の「刑の言渡しは、その効力を失う」とは、法的効果が将来に向かって消滅することを意味し、刑に処せられた既往の事実自体が消滅するものではない。そのため、刑の執行猶予期間を経過した前科の事実を量刑の資料として参酌することは憲法に違反しない。
問題の所在(論点)
刑の執行猶予期間の経過により「刑の言渡しは、その効力を失う」(刑法27条)とされる場合に、当該前科の事実を後の別罪の量刑において参酌することは許されるか。具体的には、前科の事実を量刑資料とすることが憲法31条(適正手続)等に抵触しないかが問題となる。
規範
刑法27条(現行。旧法では27条1項)に規定される「刑の言渡しは、その効力を失う」という意義は、刑の言渡しに基づく法的効果が将来に向かって消滅するという趣旨であり、刑の言渡しを受けたという既往の事実そのものまでが全くなくなるという意味ではない。裁判所が被告人の経歴、性格、境遇、犯罪の情状、犯行後の情況等を考察し、適切な刑罰を量定するにあたって、効力を失った刑に処せられた事実を参酌することは許容される。
重要事実
被告人は、過去に刑の執行猶予を言い渡され、その猶予期間を無事に経過した前科を有していた。原審は、この刑法27条に基づき効力を失ったはずの前科の事実を、被告人の経歴や性格等とともに量刑判断の資料として参酌した。これに対し弁護人は、効力を失ったはずの前科を量刑の資料とすることは、刑法27条の趣旨に反し、憲法31条、32条に違反すると主張して上告した。
あてはめ
本件において、被告人が過去に特定の刑に処せられた事実は客観的な歴史的事実として存在する。刑法27条による効力の消滅はあくまで法的効果の消滅に留まり、事実としての経歴まで否定するものではない。裁判所が被告人の資質や環境を総合的に判断して妥当な量刑を行う際、経歴の一部として前科の事実を考慮することは、適正な量刑判断のために当然に認められる合理的な参酌要素であるといえる。
結論
刑法27条により効力を失った前科を量刑の資料として参酌することは適法であり、憲法31条、32条にも違反しない。
実務上の射程
量刑判断のプロセスにおける「情状」の範囲を確定させる際に有用である。執行猶予付判決の効力が消滅した後でも、犯情や一般情状(経歴・性格)の評価において、過去の犯罪事実や前科を無視する必要がないことを示す。答案上は、累犯加重(刑法56条等)が適用されない場合であっても、情状において前科を不利に考慮する際の根拠となる。
事件番号: 昭和29(あ)2914 / 裁判年月日: 昭和30年3月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法252条の規定が憲法に違反して無効であるとしても、それは同条所定の処刑に伴う選挙権停止等の効果を生じないにとどまり、前提となる同法221条の処罰規定までを無効とするものではない。 第1 事案の概要:上告人は、公職選挙法221条(買収及び利害誘導罪)に基づき処罰された。これに対し上告人は、…