執行猶予の言渡を取り消されることなく猶予の期間を経過し刑の言渡がその効力を失つても、その言渡を受けたいという既往の事実そのものを量刑の資料に参酌することは違法でない
刑法第二七条により刑の言渡の効力を失つた前科を量刑資料に参酌することの適否
刑法27条,刑訴法381条
判旨
執行猶予期間を無事に経過して刑の言渡が効力を失った場合であっても、過去にその言渡を受けたという既往の事実を量刑の資料として参酌することは適法である。
問題の所在(論点)
執行猶予期間を満了し、刑法27条に基づき刑の言渡しが効力を失った場合において、その「言渡しを受けた事実」を後の裁判において量刑の資料として考慮することが許されるか。刑の効力消滅の範囲が問題となる。
規範
刑法27条により刑の言渡しの効力が消滅した場合であっても、それは刑罰権の行使を免れる効果を生じさせるにとどまる。したがって、過去に刑の言渡しを受けたという客観的な経歴そのものは否定されず、後の犯罪における量刑において、犯人の性格、経歴等の情状を評価するための資料として参酌することは許容される。
重要事実
上告人は、過去に刑の執行猶予の言渡しを受けた経歴があったが、当該猶予期間を執行猶予の言渡しを取り消されることなく経過した。これにより、当該刑の言渡しはその効力を失っていた。その後の別罪に関する裁判において、裁判所がこの既往の刑の言渡しを受けた事実を量刑上の資料として参酌したため、上告人がその違法性を主張して上告した。
あてはめ
本件において、上告人の執行猶予期間が経過し刑の言渡しが効力を失っていることは事実である。しかし、刑の効力が失われるとは、既往の事実として刑の言渡しを受けたこと自体が抹消されることを意味しない。裁判所が量刑を決定するにあたり、被告人の経歴や生活態度を総合的に判断する過程で、過去の受刑歴や執行猶予歴を考慮することは、刑事裁判における広範な裁量の範囲内にあると評価される。
結論
執行猶予期間を経過した既往の刑の言渡しの事実を量刑資料に参酌することは違法ではなく、適法である。
実務上の射程
被告人に前科があるものの刑の言渡しが失効している場合に、検察官が情状立証として当該事実を指摘すること、および裁判所がそれを判決理由中で「前科・前歴」的要素として引用することの正当性を裏付ける判例として機能する。答案上は、量刑の不当を争う主張に対する反論、あるいは裁判所の量刑判断の合理性を肯定する文脈で使用できる。
事件番号: 昭和28(あ)4975 / 裁判年月日: 昭和29年9月30日 / 結論: 棄却
所論前刑の判決は確定し刑の執行を終つたことは、記録上明らかである。右判決に所論のような違法があつたとしても、判決が確定した場合においては、その刑の執行を終つた日から五年内に更に罪を犯し有期懲役に処すべきときは、刑法五六条一項の再犯として取扱うべきは当然であるから、原判決には何等の違法はない。―註、少年に対し定期刑を言い…
事件番号: 昭和50(あ)1807 / 裁判年月日: 昭和50年12月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑の執行猶予期間を満了し、刑法27条により刑の言い渡しが効力を失った前科であっても、その言い渡しを受けたという既往の事実を量刑上の資料として参酌することは憲法14条1項等に違反せず、適法である。 第1 事案の概要:被告人には過去に刑の言渡しを受けた前科が存在したが、当該前科については執行猶予の言渡…