訴因変更の許可があつたときは、旧訴因につき公訴の取消がなされたものと解することはできない。
訴因変更の許可と旧訴因についての公訴の取消
刑訴法312条1項,刑訴法257条
判旨
訴因変更の許可があった場合、検察官が旧訴因について公訴を取り消したものと解することは相当ではない。
問題の所在(論点)
訴因変更の許可があった場合に、検察官において旧訴因につき公訴の取消しがあったと解すべきか。訴因変更と公訴取消しの関係が問題となる。
規範
訴因変更(刑事訴訟法312条1項)が許可された場合、裁判の対象は旧訴因から新訴因へと移行するが、これは公訴の取消し(同法257条)とは性質を異にする。したがって、訴因変更によって旧訴因が消滅したとしても、検察官による公訴の取消しがあったものとみなされることはない。
重要事実
上告人は、訴因変更の許可があった場合には検察官は旧訴因について公訴を取り消したものと解すべきであり、これに反する手続は憲法31条(適正手続)に違反すると主張して上告した。
あてはめ
最高裁は、訴因変更の許可があった際に旧訴因について公訴の取消しがあったと解することは「相当とはいえない」と短く判示した。これは、訴因変更が同一の公訴事実の範囲内において審判対象を特定し直す手続であるのに対し、公訴の取消しは公訴提起そのものを撤回する手続であり、両者は別個の制度であることを前提としている。
結論
訴因変更の許可があっても、旧訴因について公訴の取消しがあったものとは解されない。
実務上の射程
訴因変更と公訴取消しの法的性質の違いを明確にした判例である。司法試験においては、訴因変更の要否や可否の議論の前提として、訴因変更がなされた場合に旧訴因の審判対象性が失われるプロセスを説明する際の理論的根拠として活用できる。
事件番号: 昭和28(あ)5545 / 裁判年月日: 昭和29年6月15日 / 結論: 棄却
訴因変更の手続を経ないで起訴事実よりも縮少された事実を認定することの差支えないものであることは昭和二六年(あ)第七八号同年六月一五日第二小法廷判決「集五巻七号一二七七頁以下」の趣旨に徴して明らかである。