訴因変更の手続を経ないで起訴事実よりも縮少された事実を認定することの差支えないものであることは昭和二六年(あ)第七八号同年六月一五日第二小法廷判決「集五巻七号一二七七頁以下」の趣旨に徴して明らかである。
起訴事実により縮少された事実を認定する場合と訴因変更手続の要否
刑訴法312条
判旨
起訴された犯罪事実よりも縮小された事実を認定する場合、被告人の防御に実質的な不利益が生じない限り、訴因変更の手続を経る必要はない。
問題の所在(論点)
検察官が主張する訴因事実よりも「縮小された事実」を認定するにあたり、刑事訴訟法312条1項の訴因変更手続が必要か否か。
規範
裁判所が、起訴状に記載された事実よりも縮小された事実を認定する場合、それが起訴事実の範囲内に含まれ、かつ被告人の防御にとって不利益とならないときは、刑事訴訟法312条1項の訴因変更手続を経ることを要しない。
重要事実
被告人が特定の犯罪事実で起訴されたが、裁判所は審理の結果、起訴された事実の全部を認めるのではなく、その一部を縮小した事実を認定した。弁護人は、このような縮小認定を訴因変更手続なしに行うことは刑事訴訟法に違反するとして上告した。
あてはめ
本件において、裁判所が認定した事実は起訴された事実の一部を構成するものであり、起訴事実よりも縮小されている。このような縮小認定は、一般に被告人の防御範囲内に含まれるものであり、被告人に不意打ちを与えるものではない。したがって、訴因変更の手続を改めて踏むことなく、縮小された事実を認定しても、刑事訴訟法上の違法はないと解される。
結論
訴因変更の手続を経ないで、起訴事実よりも縮小された事実を認定することは差し支えない。
実務上の射程
訴因変更の要否に関する「縮小認定」の基本判例である。公訴事実の同一性が認められる範囲内で、かつ被告人の防御に実質的不利益がない場合には、訴因変更なしに認定可能とする「縮小認定の理論」を裏付けるものとして答案で活用できる。
事件番号: 昭和29(あ)2278 / 裁判年月日: 昭和31年11月9日 / 結論: 棄却
被告人はA事務局の外務員として同連盟賛助会員の募金並びに賛助金集金等の業務に従事中、昭和二六年三月二四日頃から同年八月一六日頃までの間二五回にわたつてB株式会社外二四名から集金した合計一七五〇〇〇円をその都度ほしいままに着服横領したとの業務上横領の訴因と、被告人は昭和二五年一〇月末まで右事務局員として右事務に従事し同日…