判旨
刑事裁判において、原審の訴訟手続に弁護人の選任に関する刑訴法や刑訴規則の規定に違反する瑕疵があったとしても、事実に争いがなく量刑も相当であると認められる場合には、刑訴法411条を適用して判決を取り消すべきものとは認められない。
問題の所在(論点)
原審の訴訟手続に弁護人選任に関する重大な法令違反がある場合において、事実関係に争いがなく量刑が妥当であれば、刑訴法411条1号(判決に影響を及ぼすべき法令の違反)を適用して職権で原判決を破棄すべきか。
規範
刑訴法411条に基づく職権による破棄は、原判決を維持することが著しく正義に反すると認められる場合に限られる。訴訟手続に法令違反(刑訴法289条、刑訴規則177条、178条等)があったとしても、事実に争いがなく、かつ量刑等の結論が妥当であるときは、同条を適用してまで原判決を破棄する必要はない。
重要事実
被告人および弁護人が量刑不当および訴訟法違背を理由として上告した事案。原審において、弁護人の選任等に関する刑事訴訟規則178条(または刑訴法272条、289条、規則177条)に違反する手続上の瑕疵があったことが職権調査により判明した。しかし、本件は事実に争いがない簡単な事件であり、一審・二審の量刑判断自体は相当な範囲内であった。
あてはめ
本件における手続違背(弁護人選任に関する規則違反等)は、本来であれば適正手続の観点から問題視されるべきものである。しかし、事実関係は明白であり被告人もこれを認めている「簡単な事件」である。また、導き出された量刑も法的にみて相当といえる。このような場合、手続的な瑕疵があることのみをもって直ちに判決を取り消すことは、訴訟経済や実質的妥当性の観点から「著しく正義に反する」とはいえない。
結論
原判決を破棄すべきものとは認められないため、上告を棄却する。
実務上の射程
刑事訴訟法411条の「著しく正義に反すると認めるとき」の判断基準を示す。手続違反があっても、それが実体的な結論(有罪無罪や量刑)の妥当性に影響を与えていない場合には、上告裁判所は職権破棄をしないことができるという実務上の運用を追認している。答案上は、手続違背の主張に対し「判決への影響」や「正義への反背」を否定する論理として活用できる。
事件番号: 昭和26(あ)2847 / 裁判年月日: 昭和28年3月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決書の「法令の適用」欄等において、明らかな誤記がある場合であっても、前後の記載を対照してその趣旨が明白であれば、直ちに判決に影響を及ぼす法令違反には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が上告した事案において、第一審判決の「法令の適用」の部とそれに付随する別表の内容を対照したところ、判決文中に「…