判旨
判決書の「法令の適用」欄等において、明らかな誤記がある場合であっても、前後の記載を対照してその趣旨が明白であれば、直ちに判決に影響を及ぼす法令違反には当たらない。
問題の所在(論点)
判決書の法令適用欄等における条数等の誤記が、刑事訴訟法411条等の上告理由(判決に影響を及ぼすべき法令の違反)に該当するか。
規範
判決書に記載された法令適用の条文番号や引用箇所について誤記がある場合でも、判決書の他の部分や別表等と対照することでその誤りが客観的に明らかであり、かつ正しい内容が特定できるときは、判決を破棄すべき理由とはならない。
重要事実
被告人が上告した事案において、第一審判決の「法令の適用」の部とそれに付随する別表の内容を対照したところ、判決文中に「右第百九以下」と記載されている箇所があった。しかし、事案の文脈や表の構成に照らせば、これが「右第百七以下」の単純な誤記であることが明白であった。
あてはめ
本件における「右第百九以下」という記載は、第一審判決の法令適用の部と別表を照合すれば、明らかに「右第百七以下」を指す意図であったことが判明する。このような一見して明白な誤記は、判決の結論や論理的な一貫性を損なうものではなく、正当な法適用を妨げる実質的な不備とは評価できない。したがって、職権をもって判決を破棄すべき事由(刑訴法411条)は認められない。
結論
判決書に明らかな誤記があるとしても、対照によりその誤りが判明する場合には、破棄事由にあたらない。上告棄却。
実務上の射程
判決書の誤記に関する救済・是正の限界を示す事例である。司法試験等の答案上、判決書の形式的不備を論じる際には、それが実質的な判断に影響を与えるものか、あるいは本件のように対照により補正可能な誤記に過ぎないかを区別する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和26(あ)1488 / 裁判年月日: 昭和27年5月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】第一審判決に掲げられた証拠の作成者名が記録上の作成者名と多少相違していても、それが単なる誤記または脱字であることが記録上明白であれば、判決に影響を及ぼす違法とはならない。 第1 事案の概要:被告人が上告した事案において、第一審判決が証拠として掲記した「顛末書」の作成者(被害者)の氏名と、実際に記録…