判旨
判決における証拠の引用に単純な表示上の誤りがあるとしても、その誤りが記録に照らして明白である場合には、判決の効力に影響を及ぼすような違法とはならない。
問題の所在(論点)
判決書において引用された証拠の特定に誤り(誤記)がある場合、それが刑法上の法令違反や上告理由としての適法性にどのように影響するか。
規範
判決書における証拠の引用部分に誤りがあったとしても、公判調書の記載や提出された証拠等の訴訟記録に徴して、その誤記が明白であるときは、直ちに法令違反や違憲の事由には当たらない。
重要事実
被告人が上告した事案において、第一審判決が証拠として引用した検察事務官に対する供述調書の回数につき、本来「第二、三回」と記載すべきところを「第一、二回」と記載していた。弁護人は、これを法令違反かつ憲法違反であるとして上告を申し立てた。
あてはめ
第一審における公判調書の記載内容や、記録に添付された検察事務官に対する供述調書の内容を照合すると、判決に示された「第一、二回」という表記は、客観的に「第二、三回」の誤記であることが明白である。このように、記録から真実の引用意図が容易に判明し、実質的な証拠能力や証明力の判断に直ちに影響を及ぼさない形式的誤記については、判決の基礎を揺るがすような瑕疵とはいえない。
結論
本件の誤記は明白な書き間違いに過ぎず、適法な上告理由には当たらないため、上告を棄却する。
実務上の射程
判決書の記載に明白な誤記がある場合でも、記録上その内容が特定可能であれば、上告理由として主張することは困難である。答案上は、判決の更正(刑訴法43条等)の対象となるような形式的瑕疵が、実質的な判決の妥当性や手続きの適法性に影響するかを判断する際の比較対象として用いる。
事件番号: 昭和26(あ)1488 / 裁判年月日: 昭和27年5月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】第一審判決に掲げられた証拠の作成者名が記録上の作成者名と多少相違していても、それが単なる誤記または脱字であることが記録上明白であれば、判決に影響を及ぼす違法とはならない。 第1 事案の概要:被告人が上告した事案において、第一審判決が証拠として掲記した「顛末書」の作成者(被害者)の氏名と、実際に記録…