原判決においては、控訴趣意の第一審判決の事実誤認を前提とする量刑不当の主張に対し、その事実誤認なきことを判示したのであるから、当然量刑の点についても第一審判決に不当なきことをも判断したものであつて、原判決に所論のごとき判断遺脱の違法はない。
事実誤認を前提とする量刑不当の主張に対して、控訴審で事実誤認なきことを判示した場合と量刑に関する判断の要否
刑訴法381条,刑訴法832条,刑訴法392条,刑訴規則246条
判旨
控訴趣意として事実誤認を前提とした量刑不当を主張した場合、裁判所が事実誤認がないと判断したならば、当然に量刑についても不当ではないと判断したものと解される。したがって、量刑不当の主張について明示的な判示がなくとも判断遺脱の違法は認められない。
問題の所在(論点)
事実誤認を前提とした量刑不当の主張に対し、裁判所が事実誤認の不存在のみを判示した場合、量刑不当の主張について判断遺脱(刑事訴訟法違反)の違法があるといえるか。
規範
控訴裁判所が、控訴趣意である「第一審判決の事実誤認を前提とする量刑不当の主張」に対し、前提となる事実誤認がないことを判示した場合には、当然に量刑の点についても第一審判決に不当な点がないことをも判断したものと解する。
重要事実
被告人側は、第一審判決には事実誤認があり、それを前提とすれば量刑が不当である旨を控訴趣意として主張した。これに対し、原判決(控訴審)は、第一審判決に事実誤認がないことを判示したが、量刑不当の主張それ自体については具体的な判断を明示しなかった。弁護人は、これが判断遺脱の違法にあたるとして上告した。
あてはめ
本件において弁護人が主張した量刑不当は、あくまで「第一審判決の事実誤認」を前提とするものであった。原判決がその前提となる事実誤認の不存在を判示した以上、その前提に基づいた量刑不当の主張も成立しなくなることは論理的帰結である。したがって、原判決が事実誤認なきことを判示した時点で、当然に量刑が不当でないことも判断に含まれていると評価できる。
結論
量刑不当の主張についての判断遺脱の違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
控訴趣意が前提条件(事実認定)と結論(量刑)を一体として主張している場合、前提を否定すれば結論の判断も包含されるとする法理。答案上は、理由不備や判断遺脱が争われる場面で、判決の論理的整合性を判断する際の指針として活用できる。
事件番号: 昭和28(あ)5433 / 裁判年月日: 昭和30年12月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審において被告人が事実誤認を主張する際、第一審で採用されなかった証拠の信用性を主張することは可能であるが、裁判所が記録を精査した結果、当該証拠を検討しても第一審判決に事実誤認がないと判断した場合には、上告理由としての事実誤認の主張は認められない。 第1 事案の概要:被告人側は、原審(控訴審)に…