判旨
控訴趣意書において量刑不当の主張を裏付けるために述べられた動機や犯情に関する事実は、独立した控訴理由ではなく量刑判断の一事情に過ぎず、判決において個別に判断を示す必要はない。
問題の所在(論点)
控訴趣意書に記載された犯行の動機や犯情に関する事実が、独立した控訴理由としての性格を有し、裁判所が個別に判断を示すべき対象に当たるか。
規範
被告人が控訴理由として主張した事項であっても、それが特定の控訴理由(刑訴法381条の量刑不当等)を基礎付けるための一事情を述べたに過ぎない場合には、裁判所はその個々の事実関係について独立した判断を示す義務を負わない。
重要事実
被告人の弁護人は、第一審判決の量刑不当を主張する一事情として、本件犯行の動機または犯情に関する事実関係を控訴趣意書に記載した。しかし、原審(控訴審)は当該事実関係について個別に判断を示さなかった。これに対し、弁護人は判断遺脱の違法があるとして上告した。
あてはめ
本件における控訴趣意書の記載は、第一審判決の量刑が不当であることを主張するための具体的な事実背景を説明するものと解される。このような記載は、量刑の不当という一つの控訴理由を構成する内部的な要素に留まるものであり、独立した争点として判決理由中で逐一判断を要するものではない。したがって、原審がこれに特に言及しなかったとしても、判断遺脱の違法は認められない。
結論
原判決に判断遺脱の違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
量刑不当を理由とする控訴における「判断遺脱」の範囲を限定する。答案上は、訴訟法上の不服申立ての対象が「理由」自体なのか、その「基礎となる事実」なのかを区別する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和26(あ)2980 / 裁判年月日: 昭和28年3月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】第一審判決が摘示した事実の一部に証拠能力が認められない等の事情がある場合でも、他の適法な証拠によって犯罪事実の認定が可能であれば、原判決の維持は許容される。 第1 事案の概要:被告人が第一審判決の証拠説示に違法があると主張し、原判決もまたその違法を看過したとして上告した事案。具体的には、第一審判決…