第一審が一罪と認定したものを数罪であると主張する論旨は、被告人に不利益な主張に帰し上告適法の理由とならない。
一罪との認定に対し数罪であると主張する上告理由の適否
刑訴法405条,刑訴法414条,刑訴法386条1項3号
判旨
上告審において、原審で主張も判断もされていない事項を適法な上告理由とすることはできない。また、第一審が一罪と認定したものを数罪であると主張することは、被告人に不利益な主張に帰するため認められない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法における上告理由の範囲が問題となる。具体的には、①原審で主張・判断されていない事項を上告審で新たに主張できるか、②被告人が第一審の一罪認定を数罪であると主張することが適法な上告理由となるか。
規範
上告審は事後審としての性格を有するため、原審で主張・判断されていない事項を新たに上告理由とすることは、刑事訴訟法405条等の趣旨に鑑み、原則として許されない。また、上告審における不利益変更禁止の原則またはその趣旨に照らし、被告人に不利益となる事実関係の変更を伴う主張は不適法とされる。
重要事実
被告人が上告を申し立てた際、弁護人は第一審で一罪と認定された事実について、実際には数罪(併合罪)を構成するものであると主張した。しかし、この点については原審(控訴審)において主張されておらず、当然ながら原審の判断も示されていなかった。
あてはめ
弁護人の第一の上告趣意は、原審で主張も判断もない事項に関するものであり、事後審たる上告審の構造に反する。さらに、第一審が一罪と認定したものを数罪であると主張することは、仮に認められれば罪数が増え、被告人にとって不利益な結論を導く性質のものである。したがって、このような主張は適法な上告理由として認める必要がない。
結論
本件上告は、適法な上告理由に当たらない事項を主張するものとして、棄却されるべきである。
実務上の射程
上告審における主張の制限(原審不主張事項の排除)と、被告人側からの不利益な法的評価への変更申し立てを否定した点に実務上の意義がある。特に罪数論において、被告人が「より重い罪数評価」を求めることは、不利益変更禁止の観点から制限されることを示唆している。
事件番号: 昭和30(あ)2161 / 裁判年月日: 昭和30年10月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】単なる量刑不当の主張や、控訴審で参酌済みの事情を違憲の主張として構成するものは、刑訴法405条所定の上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人および弁護人が、量刑の不当や憲法違反を理由として上告を申し立てた事案。弁護人は憲法違反を主張していたが、その具体的内容は控訴趣意書でも主張されていた…