執行猶予期間を経過した前科を量刑上参酌することは違法でないとして憲法一四条違反の主張が欠前提とされた事例
憲法14条
判旨
刑法27条により刑の言渡が効力を失った場合であっても、当該刑の言渡を受けたという既往の事実は、後の犯行に対する量刑の資料として参酌できる。
問題の所在(論点)
刑法27条により刑の言渡がその効力を失った場合において、当該刑の言渡を受けたという既往の事実を、後の犯行の量刑資料として参酌することは許されるか。
規範
執行猶予期間の満了により刑法27条に基づき刑の言渡が効力を失ったとしても、それは刑の言渡に基づく法的効果(資格制限等)が将来に向かって消滅することを意味するにとどまる。したがって、過去に刑の言渡を受けたという客観的な歴史的事実(既往の事実)それ自体が消滅するわけではなく、裁判所はこれを量刑の資料として参酌することができる。
重要事実
上告人は、過去に刑の言渡を受け、執行猶予の言渡を取り消されることなく猶予期間を経過していた。これにより刑法27条の規定に基づき当該刑の言渡は効力を失っていたが、原判決において、この既往の事実が量刑の資料として参酌された。弁護人は、これが憲法14条の法の下の平等に反すると主張して上告した。
あてはめ
本件において上告人は、過去に執行猶予付の判決を受け、その期間を無事に経過している。刑法27条により刑の言渡は失効しているが、これは法的資格の回復等を定めたものにすぎない。犯行当時に前科(またはそれに準ずる不利益な履歴)があるという「既往の事実」は、被告人の性格や行動傾向を示す情状として量刑判断に影響を与える要素である。したがって、これを裁判所が量刑の資料として取り上げることは適法である。
結論
執行猶予期間満了により刑の言渡が失効した既往の事実を量刑資料に参酌することは違法ではなく、憲法14条にも違反しない。
実務上の射程
量刑論において、前科の評価が争われる際の標準的な判断枠組みとして活用できる。特に「刑の消滅(刑法34条の2)」や「執行猶予の失効」後の事実の取り扱いについて、法的効力の消滅と歴史的事実の参酌可能性を区別する根拠となる。答案上は、情状に関する裁量権の範囲を説明する際に簡潔に引用すべきである。
事件番号: 昭和56(あ)1977 / 裁判年月日: 昭和57年5月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑の言い渡しの効力が消滅した前科であっても、その言い渡しを受けたという既往の事実自体を量刑上参酌することは、憲法14条1項に反せず適法である。 第1 事案の概要:被告人は、過去に刑の言い渡しを受けた前科を有していたが、当該前科は刑法27条又は34条の2第1項の規定に基づき、既に法律上の効力を失って…