「保護観察付執行猶予中の者」という社会的身分による差別であるという憲法一四条、三一条違反の主張が欠前提とされた事例
憲法14条,憲法31条,刑法25条2項,刑法25条の2
判旨
控訴審が量刑の当否を判断する際、被告人が保護観察付執行猶予の判決を受けて間もなく本件を犯した事実を不利益な情状として考慮することは、憲法14条や31条に違反せず許容される。
問題の所在(論点)
被告人が保護観察付執行猶予判決を受けた直後に再犯した事実を量刑上の不利益な情状として考慮することが、憲法14条(法の下の平等)や31条(適正手続)に違反しないか。
規範
量刑の判断において、前刑の執行猶予期間中であることや、判決言渡しから間がない時期に再犯に及んだ事実は、被告人の規範意識の欠如や更生への意欲の乏しさを示す客観的事実であり、不利益な情状(加重事由)として考慮することが許される。
重要事実
被告人は、以前に保護観察付執行猶予の判決を受けていたが、その言渡しを受けてから間もなく本件犯罪を犯した。控訴審は第一審判決の量刑の当否を判断するにあたり、この「判決後間もない再犯」という事実を、被告人に不利益な情状の一つとして考慮した。
あてはめ
被告人が保護観察付執行猶予という寛大な処遇(社会内での更生の機会)を得たにもかかわらず、その言渡し直後に再犯に及んだ事実は、被告人の法軽視の態度を如実に示すものである。このような事情を量刑判断における評価対象とすることは合理的理由があり、単に特定の判決を受けたことのみを理由に差別するものではない。したがって、不利益な情状として考慮することは当然に許容される。
結論
被告人が保護観察付執行猶予判決を受けて間もなく本件を犯した事実を不利益な情状として考慮することは適法であり、憲法14条、31条に違反しない。
実務上の射程
量刑事情(刑事訴訟法、刑法一般)に関する判断枠組みにおいて、前科・前歴や執行猶予中である事実をどの範囲で考慮できるかを示す。答案では、被告人の反省の程度や再犯可能性を論じる際の「犯情」以外の一般情状として活用できる。
事件番号: 昭和62(あ)417 / 裁判年月日: 昭和62年6月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法34条の2等により刑の言い渡しが効力を失った前科であっても、その言い渡しを受けたという既往の事実自体を量刑上の資料として参酌することは憲法13条、14条1項に違反せず適法である。 第1 事案の概要:被告人は過去に罰金刑を受け執行を終了してから5年を経過した前科、または執行猶予の言い渡しを取り消…