起訴状謄本送達数日後に同種の罪を犯したことを不利益な情状の一つとして考慮しても、すでに公訴を提起された者とそうでない者とを法律関係において差別しようとしているわけではないから、憲法一四条違反の主張は前提を欠く。
起訴状謄本送達数日後に同種の罪を犯したことを量刑に考慮することと憲法一四条
憲法14条
判旨
起訴状謄本の送達を受けた直後に同種の犯罪を犯したことを不利益な情状として考慮することは、法の下の平等や適正手続きに反しない。これは、単に公訴提起の事実をもって差別や不利益を科すものではなく、被告人の規範意識の欠如という刑事責任を基礎付ける事実を評価するものにすぎないからである。
問題の所在(論点)
被告人が公訴を提起され、起訴状謄本の送達を受けた直後に同種の犯罪を犯したという事実を、量刑上の不利益な情状として考慮することは、憲法14条(法の下の平等)、31条(適正手続きの保障)、32条(裁判を受ける権利)に違反するか。
規範
量刑において、被告人が公訴提起され、かつ起訴状謄本の送達を受けたという事実を認識しながら、その直後にさらに同種の罪を犯したことを不利益な情状として考慮することは許容される。これは、特定の法的地位に基づく不当な差別(憲法14条)や、適正な手続によらない刑事上の不利益(憲法31条、32条)を科すものではなく、犯行後の情状および被告人の性格・態度の評価として正当な範囲内にある。
重要事実
被告人は、ある罪について公訴を提起され、裁判所からその旨を知らせる起訴状謄本の送達を受けた。しかし、被告人はその送達からわずか数日後に、前回と同種の罪を重ねて犯した。原判決は、この事実(起訴後の再犯)を被告人に不利益な量刑上の情状の一つとして考慮し、刑を言い渡した。これに対し弁護人は、公訴提起された者とそうでない者を差別するものであり、憲法14条、31条、32条に違反すると主張して上告した。
あてはめ
本件において原判決が判示しているのは、被告人が公訴提起と起訴状送達という、自らの犯罪が司法手続の対象となっていることを明確に認識し得る状況にありながら、あえて数日後に同種の犯行に及んだという事実である。これは、所論が主張するように「公訴を提起された者」というステータスのみをもって差別しているわけではなく、また単なる公訴提起という形式的事実によって不利益を科しているわけでもない。むしろ、司法手続に接しながら短期間で再犯に及んだという点に現れた、被告人の強い反社会性や規範意識の著しい欠如を、量刑判断の基礎となる不利益な情状(情状に関する事実)として評価したものといえる。したがって、憲法違反の前提を欠く。
結論
起訴状送達直後の同種再犯を量刑上の不利益な情状として考慮することは、憲法14条、31条、32条に違反せず、適法である。
実務上の射程
本判決は、量刑判断における事実評価の範囲を示すものである。実務上、被告人の前科だけでなく、本件犯行前後の態度、特に「司法手続進行中の再犯」が強い非難対象となることを追認している。答案構成上、情状事実の評価において、被告人の更生可能性の低さや規範意識の麻痺を基礎付ける重要な間接事実として論じる際の根拠となる。また、憲法上の適正手続き違反との主張を排斥する際のロジックとしても有用である。
事件番号: 昭和58(あ)197 / 裁判年月日: 昭和58年5月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審が量刑の当否を判断する際、被告人が保護観察付執行猶予の判決を受けて間もなく本件を犯した事実を不利益な情状として考慮することは、憲法14条や31条に違反せず許容される。 第1 事案の概要:被告人は、以前に保護観察付執行猶予の判決を受けていたが、その言渡しを受けてから間もなく本件犯罪を犯した。控…