判旨
裁判所が量刑を決定する際、被告人が別の犯罪容疑で起訴されている事実を量刑の一情状として考慮することは許されるが、当該余罪を実質的に処罰する趣旨で考慮することは憲法31条に抵触し許されない。
問題の所在(論点)
被告人が公判中に別の犯罪容疑で起訴されたという事実を、本件の量刑を決定する際の情状として考慮することが、憲法31条(適正手続きの保障)および実質的な余罪処罰の禁止に触れるか。
規範
被告人の余罪(起訴されている別件を含む)を量刑の資料とする際、単に被告人の性格、経歴、犯行後の情状等を判定するための材料(一情状)として考慮することは許される。しかし、当該余罪を実質的に処罰する趣旨で、その事実を量刑の基礎として被告人を重く処罰することは、適正な手続きによらずに刑罰を科すことになり、許されない。
重要事実
被告人が道路交通法違反の罪で公判継続中、さらに別の道路交通法違反の嫌疑で公訴を提起された。原判決は、この「本件裁判中に再び道路交通法違反の嫌疑で公訴を提起された事実」を量刑上の一情状として考慮した。これに対し、弁護人は当該考慮が憲法31条に違反するとして上告した。
あてはめ
原判決の判文を検討すると、被告人が公訴提起された事実を「量刑のための一情状」として考慮したにとどまっている。当該違反事実を余罪として認定し、実質上これを処罰する趣旨で量刑の資料に供したものではなく、それによって被告人を重く処罰したとは認められない。したがって、適正な手続きに反する実質的な余罪処罰には当たらない。
結論
被告人が別件で起訴された事実を情状として考慮することは合憲であり、本件上告は棄却される。
実務上の射程
余罪の考慮に関するリーディングケースの一つ。答案上は、余罪を「犯行後の情状」として性格や更生可能性の評価に用いるのは適法だが、「実質上の処罰」に及ぶと違法(憲法31条違反・刑訴法上の逸脱)になるという限界設定を示す際に用いる。本件のように「公訴提起の事実」そのものを情状とすることは、事実認定を伴わないため実質的処罰に至りにくいとされる。
事件番号: 昭和46(あ)342 / 裁判年月日: 昭和46年7月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】未決の余罪を量刑の資料として考慮することは、それが当該被告事件の情状を推認するための資料にとどまり、実質的にその余罪を処罰する趣旨でない限り、憲法31条、39条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が起訴された被告事件の公判において、原審(控訴審)は別件の起訴状謄本等を証拠として採用し、関係証人…
事件番号: 昭和44(あ)908 / 裁判年月日: 昭和44年10月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】起訴されていない犯罪事実であっても、それが本件起訴にかかる犯罪事実の情状として認定され、量刑の資料とされるにすぎない場合は、憲法31条、39条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が刑事起訴された事案において、原判決が起訴されていない一定の事実を認定した。これに対し弁護側は、当該事実を量刑の資料…