刑の執行終了後法定期間の経過により刑が消滅した前科又は執行猶予期間が経過した前記を量刑上参酌することは違法ではないとして憲法一三条、一四条一項違反の主張が欠前提とされた事例
憲法13条,憲法14条1項
判旨
刑法34条の2等により刑の言い渡しが効力を失った前科であっても、その言い渡しを受けたという既往の事実自体を量刑上の資料として参酌することは憲法13条、14条1項に違反せず適法である。
問題の所在(論点)
刑法34条の2等の規定により「刑の言い渡しが効力を失った」前科について、裁判所が量刑の判断において既往の事実として参酌することが、憲法13条や14条1項に照らして許されるか。
規範
刑の言い渡しがその効力を失った前科(刑法34条の2による期間経過や執行猶予期間の満了等)であっても、当該言い渡しを受けたという既往の客観的事実そのものは消滅せず、裁判所が量刑を決定する際の情状として参酌することは許容される。
重要事実
被告人は過去に罰金刑を受け執行を終了してから5年を経過した前科、または執行猶予の言い渡しを取り消されることなく猶予期間を経過した前科を有していた。原審は、これらの「刑の言い渡しが効力を失った前科」を量刑上参酌して判決を下した。これに対し弁護人は、効力を失った前科を考慮することは憲法13条(幸福追求権)および14条1項(法の下の平等)に違反すると主張して上告した。
あてはめ
刑の言い渡しの効力が失われるとは、法的な資格制限等の不利益が将来に向かって消滅することを意味するにすぎない。本件被告人のように罰金刑終了後5年経過や執行猶予期間を満了した事案においても、過去に刑の言い渡しを受けたという歴史的事実自体は否定されない。したがって、被告人の経歴や再犯の危険性、性格等の情状を評価する一資料として、当該既往の事実を考慮することは、合理的な量刑判断の範囲内であり憲法に違反しないと解される。
結論
刑の言い渡しが効力を失った前科を量刑上参酌することは適法であり、憲法13条、14条1項に違反しない。本件上告は棄却される。
実務上の射程
刑事訴訟の量刑段階における「前科・前歴」の扱いの射程を確定する判例である。答案上は、刑法34条の2を根拠に前科の不利益な考慮を否定する主張に対する反論として、歴史的事実の参酌可能性を論じる際に活用する。資格制限の消滅と情状評価の資料性は別個であるという論理構成が重要となる。
事件番号: 昭和56(あ)1977 / 裁判年月日: 昭和57年5月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑の言い渡しの効力が消滅した前科であっても、その言い渡しを受けたという既往の事実自体を量刑上参酌することは、憲法14条1項に反せず適法である。 第1 事案の概要:被告人は、過去に刑の言い渡しを受けた前科を有していたが、当該前科は刑法27条又は34条の2第1項の規定に基づき、既に法律上の効力を失って…
事件番号: 昭和52(あ)2036 / 裁判年月日: 昭和53年6月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の法軽視の態度の認定資料として古い前科を考慮することは、それが特段重視されたものでない限り、憲法13条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が犯した事件の量刑判断において、裁判所は被告人の過去の犯罪歴(古い前科)を考慮した。これに対し弁護人は、古い前科を被告人の法軽視の態度の認定資料とする…