刑の言渡の効力を失なつた前科であつても量刑上参酌することは憲法でないとして、憲法一四条一項違反の主張が欠前提とされた事例
憲法14条1項,刑法27条,刑法34条の2第1項
判旨
刑の言い渡しの効力が消滅した前科であっても、その言い渡しを受けたという既往の事実自体を量刑上参酌することは、憲法14条1項に反せず適法である。
問題の所在(論点)
刑法27条又は34条の2第1項により刑の言い渡しの効力が消滅した前科について、裁判所が量刑の判断にあたって既往の事実として参酌することは、憲法14条1項に違反するか。
規範
刑法27条(執行猶予の失効)又は34条の2第1項(刑の消滅)の規定により、法律上刑の言い渡しの効力が失われた場合であっても、被告人が過去に刑の言い渡しを受けたという「既往の事実」そのものは、客観的に存在した歴史的事実である。したがって、これを量刑判断において被告人の性格、素行、再犯の危険性等を示す一事情として考慮することは、法の下の平等に反せず、許容される。
重要事実
被告人は、過去に刑の言い渡しを受けた前科を有していたが、当該前科は刑法27条又は34条の2第1項の規定に基づき、既に法律上の効力を失っていた。しかし、原審(又は第一審)は、当該前科の存在を被告人の量刑を決定する際の資料として参酌した。これに対し、被告人側は、効力が消滅した前科を量刑上考慮することは憲法14条1項に違反するとして上告した。
あてはめ
本件において、被告人には過去に刑の言い渡しを受けたという事実が存在する。刑法上の効力が消滅したといっても、それは「刑の言い渡しに基づく法的効果(資格制限等)」が将来に向かって消滅したことを意味するに過ぎない。被告人が罪を犯し、裁判所から刑を言い渡されたという歴史的・客観的事実まで否定されるものではない。このような事実は、被告人の規範意識や再犯の可能性を評価する上で重要な資料となり得るため、量刑上有利又は不利な事情として参酌することは合理的な根拠があり、差別には当たらない。
事件番号: 昭和44(あ)1473 / 裁判年月日: 昭和44年11月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法34条の2第1項により「刑の言渡しはその効力を失う」とされているのは、刑の言渡しに基づく法的効果が将来に向かって消滅するという趣旨であり、刑の言渡しを受けたという既往の事実そのものが抹消されるわけではない。したがって、同条項により刑の言渡しが効力を失った前科であっても、裁判所が量刑判断の際にこ…
結論
刑の言い渡しの効力を失った前科であっても、既往の事実として量刑上参酌することは適法であり、憲法14条1項に違反しない。
実務上の射程
司法試験の答案においては、量刑事情の妥当性を検討する場面で活用できる。特に「刑の消滅」があった前科を検察官が情状立証として提出し、弁護人がその違法性を主張する状況での規範として有用である。ただし、刑の消滅後の前科を、消滅していない前科と全く同等に(累積犯加重の対象とする等)扱うことはできない点に注意が必要である。
事件番号: 昭和62(あ)417 / 裁判年月日: 昭和62年6月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法34条の2等により刑の言い渡しが効力を失った前科であっても、その言い渡しを受けたという既往の事実自体を量刑上の資料として参酌することは憲法13条、14条1項に違反せず適法である。 第1 事案の概要:被告人は過去に罰金刑を受け執行を終了してから5年を経過した前科、または執行猶予の言い渡しを取り消…
事件番号: 昭和46(あ)555 / 裁判年月日: 昭和46年5月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】前科を量刑上の資料として参酌することは、憲法39条後段が禁じる二重処罰には当たらず、また憲法14条1項の法の下の平等にも違反しない。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件において有罪判決を受けた際、裁判所が被告人の有する前科を量刑上の資料として参酌し、刑を言い渡した。これに対し弁護人は、前科を量刑に…