憲法三七条二項は、刑事被告人に対し、受訴裁判所の訴訟手続において、すべての証人に対して審問する機会を充分に与えられる旨を規定したものであること当裁判所の判例(昭和二四年(つ)第九三号同二五年三月六日大法廷決定刑集四巻三号三〇九頁、昭和二五年(あ)第七九七号同二七年六月一八日大法廷判決刑集六巻六号八〇一頁)である。しからば第一審が再審請求の理由の有無についてする事実の取調として証人の尋問をするに当り、申立人に立会および尋問の機会を与えなかつたとしても、そのことをもつて憲法三七条二項に違反するということはできないのである。
刑訴法第四四五条にいう「事実の取調」と憲法第三七条第二項。
刑訴法445条,刑訴規則33条,憲法37条2項
判旨
再審請求手続における事実の取調べは、受訴裁判所の公判手続そのものではないため、憲法37条2項の適用はない。したがって、裁判所の裁量により証人尋問等の方法を決定でき、当事者に立ち会いや尋問の機会を与えず、あるいは証拠調べを却下しても直ちに違憲とはならない。
問題の所在(論点)
再審請求手続における証人尋問等の事実取調べにおいて、当事者に立ち会い・尋問の機会を与えないこと、または申請された証人の取調べを行わないことが、憲法37条2項(証人審問権)に違反するか。
規範
1. 憲法37条2項は、受訴裁判所の訴訟手続(公判手続)において刑事被告人に証人審問権を保障するものである。一方、確定判決に対する再審開始の是非を判断する手続は、公判そのものではなく、受訴裁判所の訴訟手続に属しない。 2. 再審請求の理由の有無を判断するための事実取調べにおいて、いかなる方法を用いるかは、再審請求を受けた裁判所の合理的な裁量に委ねられる。
重要事実
申立人が再審請求を行った際、第一審裁判所は証人Aの尋問を行った。申立人は、この尋問において自身に立ち会いや尋問の機会が与えられなかったことが憲法37条2項に違反すると主張した。また、原審(抗告審)において弁護人が申請した証人を取り調べなかったことも同様に違憲であると主張して特別抗告を申し立てた。なお、記録上、第一審は申立人や弁護人に日時等を通知しており、弁護人は実際に立ち会って尋問を行っていた。
事件番号: 昭和31(し)11 / 裁判年月日: 昭和31年3月27日 / 結論: 棄却
刑訴四三五条六号にもとずく再審の請求にあたり、あらたに発見した証拠として証人の取調を求めている場合でも、再審の請求が理由があるかどうかを判断するためには、必ずその証人の取調をしなければならないものではないことは、当裁判所の判例とするところである。(昭和二八年(し)第一二号同年一一月二四日第三小法廷決定、集七巻一一号二二…
あてはめ
1. 再審手続は公判そのものではないため、憲法37条2項が直接適用される場面ではない。したがって、同条項を根拠に当然に立ち会い・尋問権が保障されるわけではない。 2. 証拠採用の是非についても裁判所の合理的な裁量に属する。本件では、第一審において弁護人に立会・尋問の機会が与えられており、原審が合理的判断に基づき新たな証人尋問を行わなかったとしても、裁量の範囲内である。
結論
再審請求手続における事実取調べの態様や証拠採用の成否は裁判所の裁量に属し、憲法37条2項違反の問題は生じない。本件の各措置に違憲・違法な点はなく、特別抗告を棄却する。
実務上の射程
再審構造における「公判手続」と「再審開始決定前の事実取調べ」の性質上の区別を明確にする際に用いる。実務上、再審請求手続における証拠開示や事実取調べの要請において、被告人側の防御権が憲法37条2項によってどこまで直接的に保障されるかを検討する際の基礎となる判例である。
事件番号: 昭和49(し)67 / 裁判年月日: 昭和49年10月4日 / 結論: 棄却
裁判所が控訴棄却決定に対する異議申立の理由の有無を判断するため事実の取調をするにあたり、被告人側に立会及び尋問の機会を与えなかつたとしても、憲法三七条二項に違反するものでないことは、当裁判所の判例(昭和二七年六月一八日大法廷判決・刑集六巻六号八〇〇頁)の趣旨とするところである。
事件番号: 昭和37(し)22 / 裁判年月日: 昭和37年8月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】再審請求棄却決定に対する特別抗告において、抗告理由が単なる違憲の主張にとどまり、原決定による憲法判断の不当性を具体的に示すものでない場合は、不適法として棄却される。 第1 事案の概要:強盗殺人被告事件について、昭和37年5月29日に東京高等裁判所が下した再審請求棄却決定に対し、特別抗告が申し立てら…
事件番号: 昭和28(し)12 / 裁判年月日: 昭和28年11月24日 / 結論: 棄却
刑訴第四三五条第六号に基く再審の請求にあたり、あらたに発見した証拠として証人の取調を求めている場合でも、その再審の請求が理由があるかどうかを判断するために、その証人の取調をするか、又はこれをしないで、趣意書に添えた証拠書類等及び確定事件記録につき必要と認める調査をするにとどめ、あるいはさらにその証人の取調以外の方法によ…
事件番号: 昭和47(し)75 / 裁判年月日: 昭和47年11月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法違反を主張する抗告であっても、その実質が単なる法令違反や事実誤認の主張に帰する場合には、適法な抗告理由には当たらない。 第1 事案の概要:申立人本人が憲法76条3項違反を、弁護人が憲法36条および38条違反を主張して抗告を申し立てた事案である。しかし、それらの主張は具体的・実質的には原審の事実…