帝銀事件再審請求事件
判旨
憲法違反を主張する抗告であっても、その実質が単なる法令違反や事実誤認の主張に帰する場合には、適法な抗告理由には当たらない。
問題の所在(論点)
形式的に憲法違反を主張している抗告について、その内容が実質的に単なる法令違反や事実誤認の主張である場合に、適法な抗告理由(刑事訴訟法上の憲法違反の主張)として認められるか。
規範
特別抗告において憲法違反を申し立てる場合であっても、主張の内容が実質的に単なる法令違反または事実誤認に帰するものは、刑訴応急措置法13条(旧法下の抗告理由)あるいは現行の刑事訴訟法405条・433条等の抗告理由として適格を欠く。
重要事実
申立人本人が憲法76条3項違反を、弁護人が憲法36条および38条違反を主張して抗告を申し立てた事案である。しかし、それらの主張は具体的・実質的には原審の事実認定の不当や法令適用の誤りを指摘するにとどまるものであった。
あてはめ
申立人による憲法76条3項(裁判官の良心・独立)違反の主張、および弁護人による憲法36条(拷問・残虐刑の禁止)、憲法38条(黙秘権・自白)違反の主張について検討するに、いずれもその実質は原判決の法令適用や事実認定の妥当性を争うものである。したがって、憲法違反という形式をとってはいるものの、実質は単なる法令違反および事実誤認の主張に帰すると判断される。
結論
本件抗告は、刑訴応急措置法18条1項(現行法の抗告規定に相当)所定の適法な抗告理由にあたらないため、棄却を免れない。
事件番号: 昭和37(し)22 / 裁判年月日: 昭和37年8月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】再審請求棄却決定に対する特別抗告において、抗告理由が単なる違憲の主張にとどまり、原決定による憲法判断の不当性を具体的に示すものでない場合は、不適法として棄却される。 第1 事案の概要:強盗殺人被告事件について、昭和37年5月29日に東京高等裁判所が下した再審請求棄却決定に対し、特別抗告が申し立てら…
実務上の射程
憲法違反を理由とする上告や抗告において、主張が単なる法令違反等にすぎない「実質的法令違反」である場合に、門前払い(棄却)とする実務上の処理基準を示している。司法試験答案においては、憲法違反の主張が実質的に事案の認定不当を争うものである場合に、この判例の論理を引用して適法性を否定する際に用いる。
事件番号: 昭和32(し)49 / 裁判年月日: 昭和32年10月23日 / 結論: 棄却
再審請求人が裁判所の求意見に対し現実に意見書を提出した場合のみならず、裁判所が再審を請求した者に対し意見を求め、且つその意見の申述につき相当期間をおいたにも拘らず、請求人から遂に意見を申述しなかつた場合も、刑訴規則二八六条にいう意見を聴いた場合に該る。
事件番号: 昭和28(し)25 / 裁判年月日: 昭和28年4月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】特別抗告が適法とされるためには、原決定において憲法上の判断が示されている必要がある。原決定が単に再審請求理由の存否という法律上の判断にとどまる場合には、特別抗告の要件を満たさない。 第1 事案の概要:抗告人は、旧刑事訴訟法485条各号に規定される再審請求事由があるとして再審を請求した。これに対し原…
事件番号: 昭和56(し)154 / 裁判年月日: 昭和58年11月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】再審請求における「明らかな証拠」(刑訴法435条6号)の判断について、原決定が特定の不当な見解に立っていない限り、単なる法令違反や事実誤認の主張は特別抗告の理由に当たらない。 第1 事案の概要:本件は、刑訴法435条6号に基づき再審請求を行った抗告人が、原決定(再審請求を棄却したものと推認される)…
事件番号: 昭和26(し)105 / 裁判年月日: 昭和28年7月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対しては、刑訴応急措置法などの特別の規定により許容される場合を除き、抗告を申し立てることはできない。また、再審請求等において新証拠の提示もなく事実認定を争うのみでは、適法な特別抗告理由に当たらない。 第1 事案の概要:被告人は、原確定判決が認定した自らの性行、死因、犯行の原因、動機、お…