判旨
特別抗告が適法とされるためには、原決定において憲法上の判断が示されている必要がある。原決定が単に再審請求理由の存否という法律上の判断にとどまる場合には、特別抗告の要件を満たさない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法における特別抗告の適格性について、原決定が憲法判断を含まず、単に法律(旧刑訴法)の再審請求事由の存否を判断したにすぎない場合に、特別抗告の要件を満たすか。
規範
特別抗告(旧刑事訴訟法下においては刑事訴訟法応急措置法18条1項)が適法であるためには、原決定において憲法違反または憲法解釈の誤り等の憲法上の判断が示されていることを要する。
重要事実
抗告人は、旧刑事訴訟法485条各号に規定される再審請求事由があるとして再審を請求した。これに対し原決定は、抗告人が主張する事由はいずれの再審請求理由にも該当しないとして請求を退けた。抗告人はこの原決定を不服として、最高裁判所に対し特別抗告を申し立てた。
あてはめ
本件における原決定の内容をみるに、抗告人が再審請求の理由として主張する事項が旧刑訴法485条の各号に該当するか否かを判断しているのみである。これは純然たる法律上の要件充足性の判断であり、特段の憲法上の判断を示したものではないと評価される。したがって、憲法判断の介在を前提とする特別抗告の適格性を欠くといえる。
結論
本件特別抗告は刑事訴訟法応急措置法18条1項所定の要件を具えておらず、不適法であるため棄却される。
実務上の射程
決定に対する不服申立てとしての特別抗告の対象を、憲法上の問題がある場合に限定する実務上の運用を確認するもの。答案上は、法令解釈の誤りのみを主張して特別抗告を行うことの不適法性を論述する際の根拠となる。
事件番号: 昭和29(し)20 / 裁判年月日: 昭和29年6月15日 / 結論: 棄却
有罪を言渡した確定判決に対する再審の請求を棄却した地裁の決定に対する即時抗告について、高裁が右再審請求の事由とするところは不適法であるとして、右即時抗告を棄却した決定に対しては、右確定判決に憲法違反があることを理由として最高裁判所に特別抗告を申し立てることはできない。
事件番号: 昭和28(し)45 / 裁判年月日: 昭和28年7月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】再審請求の棄却決定に対する即時抗告において、原決定が単に再審事由の不在を判断したに留まり憲法上の判断を示していない場合、当該抗告は不適法として棄却される。 第1 事案の概要:抗告人は再審請求を行ったが、原裁判所は、主張された請求理由が旧刑訴法485条各号(再審事由)のいずれにも該当しないとしてこれ…
事件番号: 昭和47(し)75 / 裁判年月日: 昭和47年11月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法違反を主張する抗告であっても、その実質が単なる法令違反や事実誤認の主張に帰する場合には、適法な抗告理由には当たらない。 第1 事案の概要:申立人本人が憲法76条3項違反を、弁護人が憲法36条および38条違反を主張して抗告を申し立てた事案である。しかし、それらの主張は具体的・実質的には原審の事実…
事件番号: 昭和28(す)163 / 裁判年月日: 昭和28年4月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判官の忌避の裁判が憲法32条、37条1項に違反するという主張は、独自の憲法解釈に基づかない限り、実質的には訴訟法違反を主張するものにすぎず、特別抗告の理由とはならない。裁判官の構成を含め、法に従った裁判所の判断は憲法上の裁判を受ける権利を保障しているものと解される。 第1 事案の概要:本件は、裁…
事件番号: 昭和26(し)93 / 裁判年月日: 昭和27年7月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】高等裁判所がなした再審請求棄却決定に対しては、当該裁判所への異議の申立てが認められているため、他に不服を申し立てることができないときに当たらない。したがって、刑訴法433条1項に基づく最高裁判所への特別抗告をすることはできない。 第1 事案の概要:本件は、高等裁判所が刑訴法447条1項によりなした…