裁判所が控訴棄却決定に対する異議申立の理由の有無を判断するため事実の取調をするにあたり、被告人側に立会及び尋問の機会を与えなかつたとしても、憲法三七条二項に違反するものでないことは、当裁判所の判例(昭和二七年六月一八日大法廷判決・刑集六巻六号八〇〇頁)の趣旨とするところである。
控訴棄却決定に対する異議申立につき決定をするにあたつての事実の取調と被告人の反対尋問権
憲法37条2項,刑訴法43条3項,刑訴規則33条
判旨
裁判所が控訴棄却決定に対する異議申立ての理由の有無を判断するために事実の取調べを行う際、被告人側に立会い及び証人尋問の機会を与えなくても、憲法37条2項に違反しない。
問題の所在(論点)
裁判所が控訴棄却決定に対する異議申立ての理由の有無を判断するために事実の取調べをするにあたり、被告人側に立会い及び尋問の機会を与えないことは、憲法37条2項(証人審問権)に違反するか。
規範
憲法37条2項が保障する証人審問権(証人に反反対尋問する機会)は、公判手続における証拠調べにおいて保障されるものである。これに対し、決定手続における事実取調べは、裁判所の職権による補充的な性格を有するため、当事者に立会いや尋問の機会を与えることは憲法上必須ではない。
重要事実
被告人が控訴棄却決定を受け、これに対して異議の申立てを行った。裁判所は、当該異議申立てに理由があるか否かを判断するため、事実の取調べを実施した。その際、裁判所は被告人および弁護人に対し、取調べへの立会いおよび証人に対する尋問の機会を与えなかった。
事件番号: 昭和37(し)29 / 裁判年月日: 昭和37年12月25日 / 結論: 棄却
憲法三七条二項は、刑事被告人に対し、受訴裁判所の訴訟手続において、すべての証人に対して審問する機会を充分に与えられる旨を規定したものであること当裁判所の判例(昭和二四年(つ)第九三号同二五年三月六日大法廷決定刑集四巻三号三〇九頁、昭和二五年(あ)第七九七号同二七年六月一八日大法廷判決刑集六巻六号八〇一頁)である。しから…
あてはめ
本件における事実取調べは、控訴棄却という決定手続の妥当性を判断するための付随的な手続である。憲法37条2項が予定する公判期日における証拠調べとは性質を異にするものであるから、被告人側の立会い・尋問機会の欠如は、同条項が保障する権利の侵害には当たらないと解される。
結論
控訴棄却決定に対する異議申立手続における事実取調べで、被告人側に立会い等の機会を与えなくても、憲法37条2項に違反しない。
実務上の射程
本判決は決定手続における事実取調べの性質を限定的に解したものである。答案上は、公判手続外での事実確認手続(刑訴法43条3項等)における適正手続の保障の限界を論じる際の論拠として活用できる。ただし、あくまで憲法上の最低限度の保障を判示したものであり、解釈論として手続的保障の必要性を否定するものではない点に留意する。
事件番号: 昭和24(つ)93 / 裁判年月日: 昭和25年3月6日 / 結論: 棄却
所論は裁判長の被告人に對する個々の尋問に對する被告人の供述が他の共同被告人に不利益であつたにもかかわらず、裁判長がその都度當該他の共同被告人に反對訊問するように注意しなかつた措置又はその共同被告人又は辯護人に對しその都度現實に反對尋問する機會を與えなかつた措置は被告人の證人に對する基本的權利を規定した憲法第三七條第二項…
事件番号: 昭和34(し)39 / 裁判年月日: 昭和34年8月27日 / 結論: 棄却
刑訴第三九三条第二項が、控訴審における第一審判決後の刑の量定に影響を及ぼすべき情状に関する事実取調の必要の有無を裁判所の裁量に委ねたことは、憲法に違反しない。
事件番号: 昭和28(し)62 / 裁判年月日: 昭和29年2月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条2項は受訴裁判所の公判手続における証人尋問権を保障するものであり、捜査段階の証人尋問(刑訴法228条)において弁護人の立会いを任意としたとしても、直ちに同条項に反するものではない。 第1 事案の概要:検察官が刑訴法227条に基づき証人Aの尋問を請求した際、被疑者には既に弁護人が付されてい…
事件番号: 昭和28(し)64 / 裁判年月日: 昭和29年2月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条2項の証人尋問権は受訴裁判所の訴訟手続における保障であり、捜査段階の証人尋問には適用されない。そのため、弁護人の立会いなく行われた刑訴法228条の証人尋問手続は憲法違反ではない。 第1 事案の概要:検察官は、刑事訴訟法227条に基づき証人Aの尋問を裁判官に請求した。当時、被疑者には既に弁…