判旨
憲法37条2項の証人尋問権は受訴裁判所の訴訟手続における保障であり、捜査段階の証人尋問には適用されない。そのため、弁護人の立会いなく行われた刑訴法228条の証人尋問手続は憲法違反ではない。
問題の所在(論点)
捜査段階における裁判官の証人尋問(刑訴法227条、228条)において、弁護人を立ち会わせずに実施した手続が、憲法34条(弁護人依頼権)および37条2項(証人審問権)に違反するか。
規範
1. 憲法37条2項の規定は、受訴裁判所の訴訟手続における刑事被告人の証人尋問権を保障したものであり、捜査手続における保障規定ではない。2. 刑訴法228条は検察官の強制捜査処分請求に関する規定であり、同条2項が証人尋問への弁護人等の立会いを任意としたとしても、直ちに憲法37条等に反するものではない。
重要事実
検察官は、刑事訴訟法227条に基づき証人Aの尋問を裁判官に請求した。当時、被疑者には既に弁護人が選任されていたが、検察官は尋問請求書に弁護人の氏名を記載しなかった。その結果、裁判官は弁護人の有無を確認せず、かつ「捜査に支障を生ずる虞」の有無を判断することなく、弁護人の立会いがない状態で証人尋問を実施した。被告人側は、この手続が憲法34条および37条の趣旨に反する違法なものであるとして、証人尋問調書の証拠採用に対する異議申し立てを棄却した原決定を不服とし、特別抗告を申し立てた。
あてはめ
憲法37条2項は、公判段階における被告人の権利を定めたものであり、本件のような捜査段階の証人尋問には直接及ばない。刑訴法228条に基づく証人尋問は、捜査上の必要性から行われる処分であり、同条2項により弁護人の立会いを認めるか否かは、裁判官の合理的な裁量(捜査への支障の有無等)に委ねられている。本件において、弁護人の氏名記載がなく立会いなしで尋問が行われた事実は認められるが、これは捜査手続上の運用の問題にとどまり、憲法上の保障を侵害するものではない。
結論
本件証人尋問が弁護人の立会いなく行われたとしても、憲法34条、37条に違反しない。したがって、原決定に憲法解釈の誤りはなく、特別抗告は棄却される。
事件番号: 昭和28(し)62 / 裁判年月日: 昭和29年2月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条2項は受訴裁判所の公判手続における証人尋問権を保障するものであり、捜査段階の証人尋問(刑訴法228条)において弁護人の立会いを任意としたとしても、直ちに同条項に反するものではない。 第1 事案の概要:検察官が刑訴法227条に基づき証人Aの尋問を請求した際、被疑者には既に弁護人が付されてい…
実務上の射程
捜査段階の証人尋問における立会権の限界を示す判例である。答案上は、憲法37条2項の射程が公判手続に限定されることを論証する際の根拠として活用できる。ただし、現代の刑事訴訟実務や規則(刑訴規則151条等)における弁護人への通知義務との関係では、あくまで憲法論としての判断である点に注意を要する。
事件番号: 昭和28(し)63 / 裁判年月日: 昭和29年2月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】捜査段階における証人尋問(刑訴法227条)において、弁護人の立会いを認めるか否かは裁判官の裁量に委ねられており、弁護人の立会いなしに尋問が行われたとしても憲法37条2項等に違反しない。 第1 事案の概要:検察官が刑訴法227条に基づき証人Aの尋問を請求した際、被疑者には既に弁護人が選任されていたが…
事件番号: 昭和28(し)65 / 裁判年月日: 昭和29年2月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法227条に基づく捜査上の証人尋問に弁護人が立ち会わなかったとしても、憲法37条2項の証人尋問権は受訴裁判所の公判手続を保障するものであり、捜査段階の手続には及ばないため、憲法違反とはならない。 第1 事案の概要:検察官が刑事訴訟法227条に基づき裁判官に対し証人尋問を請求した際、被疑者等…
事件番号: 昭和28(し)70 / 裁判年月日: 昭和29年6月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判官による証人尋問(刑訴法227条)において、被疑者に弁護人が選任されている場合であっても、捜査に支障を生ずるおそれがあると認められるときは、弁護人を立ち会わせないことができる。 第1 事案の概要:裁判官が刑訴法227条に基づき証人Bを尋問するにあたり、被疑者に弁護人が選任されていることを認識し…
事件番号: 昭和28(し)23 / 裁判年月日: 昭和28年4月7日 / 結論: 棄却
「何人も、自己が刑事訴追を受け、又は有罪判決を受ける虞のある証言を拒むことができる。」のであるから(刑訴一四六条)、被告人と共犯関係があるものとして起訴されている者が証人となつても、自身の公訴事実について不利益な証言を強要されることにはならない。