「何人も、自己が刑事訴追を受け、又は有罪判決を受ける虞のある証言を拒むことができる。」のであるから(刑訴一四六条)、被告人と共犯関係があるものとして起訴されている者が証人となつても、自身の公訴事実について不利益な証言を強要されることにはならない。
共犯関係にある者の一方(共同審理を受けていない)を他方のための証人として尋問することと憲法第三八条第一項
刑訴法146条,憲法38条1項
判旨
被告人と共犯関係にあり別個に起訴されている者は、証言拒絶権(刑訴法146条)により自己に不利益な証言を強制されない仕組みが保障されているため、当該被告人の事件で証人として尋問することは憲法38条1項に違反しない。
問題の所在(論点)
被告人と共犯関係にあり、別途起訴されている者を証人として尋問することが、自己に不利益な供述を強要されない権利を定めた憲法38条1項に違反するか。
規範
憲法38条1項が保障する自己負罪拒否特権は、刑事訴追を受けるおそれのある証言を拒むことができるとする刑事訴訟法146条の規定によって具体化されている。したがって、証人として出廷しても、自身の刑事事件に関する不利益な事項について証言を拒絶し得る手続的保障がある限り、証人尋問自体が直ちに同条項に抵触することはない。
重要事実
被告人と共犯関係にあるとして起訴されているが、共同審理は受けていない別個の被告人がいた。裁判所がこの共犯者を証人として尋問しようとしたところ、所論(抗告人側)は、共犯者を証人として尋問することは、証人自身の公訴事実について不利益な証言を強要することになり、憲法38条1項に違反すると主張して特別抗告を申し立てた。
事件番号: 昭和28(し)62 / 裁判年月日: 昭和29年2月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条2項は受訴裁判所の公判手続における証人尋問権を保障するものであり、捜査段階の証人尋問(刑訴法228条)において弁護人の立会いを任意としたとしても、直ちに同条項に反するものではない。 第1 事案の概要:検察官が刑訴法227条に基づき証人Aの尋問を請求した際、被疑者には既に弁護人が付されてい…
あてはめ
刑事訴訟法146条は、「何人も、自己が刑事訴追を受け、又は有罪判決を受ける虞のある証言を拒むことができる」と規定している。本件において、被告人と共犯関係にある者が証人として呼び出されたとしても、この証言拒絶権を行使することによって、自己の公訴事実について不利益な証言を強要される事態は回避され得る。このように、法が証人の不利益な証言を強要しない仕組みを設けている以上、証人尋問の手続を実施すること自体が不当な供述強制にあたるとはいえない。
結論
被告人と共犯関係にある者(別個に起訴されている者)を証人として尋問することは、憲法38条1項に違反しない。
実務上の射程
共犯者の証人適格を肯定する根拠として機能する。分離された共犯者や別件で起訴中の共犯者は、証言拒絶権の告知(刑訴法146条、規則121条等)を前提に証人として尋問可能であり、その証言は証拠能力を有する。ただし、実務上は宣誓の有効性や自己負罪拒否権との調整が議論の対象となる。
事件番号: 昭和28(し)64 / 裁判年月日: 昭和29年2月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条2項の証人尋問権は受訴裁判所の訴訟手続における保障であり、捜査段階の証人尋問には適用されない。そのため、弁護人の立会いなく行われた刑訴法228条の証人尋問手続は憲法違反ではない。 第1 事案の概要:検察官は、刑事訴訟法227条に基づき証人Aの尋問を裁判官に請求した。当時、被疑者には既に弁…
事件番号: 昭和28(し)63 / 裁判年月日: 昭和29年2月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】捜査段階における証人尋問(刑訴法227条)において、弁護人の立会いを認めるか否かは裁判官の裁量に委ねられており、弁護人の立会いなしに尋問が行われたとしても憲法37条2項等に違反しない。 第1 事案の概要:検察官が刑訴法227条に基づき証人Aの尋問を請求した際、被疑者には既に弁護人が選任されていたが…
事件番号: 昭和28(し)26 / 裁判年月日: 昭和28年9月1日 / 結論: 棄却
刑訴第一四六条にいう「刑事訴追を受ける虞あるとき」とは、証言の内容自体に刑事訴追を受ける虞のある事実を包含する場合をいうのであつて、証人が真実を述べることにより其の供述を偽証なりとして訴追を受ける虞ありとの事由で、証言を拒否し得るものではない。
事件番号: 昭和28(し)65 / 裁判年月日: 昭和29年2月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法227条に基づく捜査上の証人尋問に弁護人が立ち会わなかったとしても、憲法37条2項の証人尋問権は受訴裁判所の公判手続を保障するものであり、捜査段階の手続には及ばないため、憲法違反とはならない。 第1 事案の概要:検察官が刑事訴訟法227条に基づき裁判官に対し証人尋問を請求した際、被疑者等…