原判決の確定しているパスハツピと称する水薬は、薬事法第二条第一項第二号所定の「医薬品」にあたり、被告人等が疾病治療の目的でこれを患者の患部に塗布し又は患者をして持つ帰つて塗布させるためにこれを交付した行為は、所論あん摩師、はり師、きゆう師及び柔道整復師法(昭和二二年法律第二一七号)附則第一九条第一項による届出にかかる医業類似行為の範囲内には属せず、同条第二項により同条第一項の届出医業類似行為者に準用されている同法律第四条所定の薬品の投与等の禁止規定に違反し、医師法第一七条にいわゆる「医業」を組成する医行為に当たる。
医師法第一七条にいわゆる「医業」を組成する医行為にあたるとされた事例。
あん摩師、はり師、きゆう師及び柔道整復師法(昭和22年法律217号)4条,あん摩師、はり師、きゆう師及び柔道整復師法(昭和22年法律217号)附則19条1項,あん摩師、はり師、きゆう師及び柔道整復師法(昭和22年法律217号)附則19条2項,薬事法2条1項2号,医師法17条
判旨
医師法17条の「医事」を構成する医行為とは、医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為をいい、副作用等の危険がある薬品の投与・施用はこれに該当する。
問題の所在(論点)
医師免許を有しない者が、副作用を惹起するおそれのある薬剤を治療目的で塗布・交付する行為が、医師法17条にいう「医業(医行為)」に該当するか。
規範
医師法17条にいう「医業」を構成する「医行為」とは、医師の資格を有しない者がこれを行うことによって、保健衛生上の危害を生ずるおそれのある行為を指す。また、薬事法(現・薬機法)上の医薬品を治療目的で投与・交付する行為は、原則として医行為に該当する。
重要事実
被告人両名は医師ではないが、届出医業類似行為者として、神経痛等の治療目的で「バスハツピ」と称する水薬を患者の患部に塗布し、または交付する行為を業として行った。被告人らは、当該薬剤は無害有効であり、その施用は憲法22条により保障される自由な医業類似行為に含まれると主張して、医師法違反に問われた原判決を不服として上告した。
事件番号: 昭和25(あ)3488 / 裁判年月日: 昭和27年7月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】医師法17条にいう「業」とは、反復継続の意思をもって医行為を行うことを指し、営利の目的(生活上の資料を得る目的)や報酬の有無は、その成立を左右しない。 第1 事案の概要:被告人が医術を業とする目的で医行為を行ったとされる事案において、原判決は被告人の行為を医行為と認定した。しかし、原判決が当該行為…
あてはめ
本件水薬は、薬事法2条1項2号所定の「医薬品」に当たる。当該薬剤は、気浴や湿布等に使用した場合、特定の体質の人に高度の皮膚炎、悪心、下痢、発熱等の重い副作用を惹起することがあり、人体に無害であるとはいいきれない。したがって、正しい医学的注意の下に患者に施用することを要するものであり、これを医師でない者が業として行うことは、保健衛生上の危害を生ずるおそれがあるといえる。
結論
被告人らの行為は医師法17条にいう「医業」を構成する医行為に該当するため、医師でない被告人らがこれを業として行ったことは同条に違反する。
実務上の射程
本判決は医行為の定義として「保健衛生上の危害のおそれ」という実質的基準を前提としている。届出医業類似行為者であっても、医薬品の投与等の禁止規定に従う必要があり、その範囲を逸脱して副作用の危険がある行為を行う場合は、医師法違反を構成することを明示した点に意義がある。
事件番号: 昭和27(あ)2532 / 裁判年月日: 昭和28年11月20日 / 結論: 棄却
一 医師法施行規則第一一条に規定する以外の場所である実父の開業している医院で代診として独立して自ら医行為をするような場合は、実地修練の範囲を超えるものである。 二 医師法にいわゆる医業とは、反覆継続の意思を以つて医行為をすることをいう。
事件番号: 昭和28(あ)3373 / 裁判年月日: 昭和30年5月24日 / 結論: 棄却
患者に対し聴診、触診、指圧等を行い、その方法がマツサージ按摩の類に似てこれと異なり交感神経等を刺激してその興奮状態を調整するもので医学上の知識と技能を有しない者がみだりにこれを行うときは生理上危険ある程度に達しているときは、医行為と認めるのが相当である。