所論は、原判決は被告人の昭和三四年六月下旬頃から同三五年五月初旬頃までの管理売春の所為につき、これを一罪として一個の刑を科しているけれども、被告人には昭和三四年九月一九日宣告同年一〇月七日確定の道路交通取締法違反による罰金三、〇〇〇円及び昭和三五年一月二八日宣告同年二月一七日確定の同法違反による罰金四、〇〇〇円の二個の確定裁判が存するのであるから、被告人の管理売春の所為はそれぞれ右二個の確定裁判と併合罪の関係に立ち、結局三個の刑を科すべきことになるのであつて、これを一罪として一個の刑を科した原判決は東京高裁昭和二九年九月二八日判決、名古屋高裁金沢支部昭和三一年一一月二七日判決に違反しかつ刑法第四五条の適用を誤つたものであると主張するが、所論は結局被告人に不利益な主張に帰するのであつて、適法な上告理由に当らない。
被告人に対し不利益な主張であつて適法な上告理由にあたらないとされた事例。―一罪に対する併合罪の主張―
刑法45条4後段,刑訴法351条,刑訴法402条,刑訴法411条
判旨
被告人に不利益な主張を上告理由とすることは適法な上告理由には当たらない。包括一罪として処断された事案において、確定裁判を挟むことで併合罪となり刑を分断すべきとの主張は、被告人に不利益な主張に帰するため、これを認めなかった。
問題の所在(論点)
被告人の一連の行為が包括一罪として処断されている場合において、その中間に別罪の確定判決が存在することを理由に、併合罪として複数の刑を科すべきとする主張は、適法な上告理由となるか。
規範
上告審において、被告人側から原判決よりも被告人に不利益となるような法令適用(刑法45条後段の併合罪規定を適用して刑を分断し、複数の刑を科すべきとする等)を主張することは、適法な上告理由を構成しない。
重要事実
被告人は昭和34年6月下旬から35年5月初旬にかけて管理売春を行った。その期間中に、昭和34年9月宣告・同年10月確定の道路交通取締法違反(罰金刑)と、昭和35年1月宣告・同年2月確定の同法違反(罰金刑)という2つの確定裁判があった。原審は被告人の管理売春を包括一罪として一個の刑を科したが、弁護人は確定裁判を境に罪を分断し、3つの併合罪として3つの刑を科すべき(刑法45条後段適用)と主張して上告した。
あてはめ
弁護人の主張は、原判決が一個の刑を科したことに対し、刑法45条を適用して三個の刑を科すべきとするものである。しかし、このような主張は、結果として一個の処断刑の範囲で刑を言い渡した原判決よりも被告人に重い、あるいは不利な法的状態(刑の分断・複数化)を求めるものに他ならない。したがって、かかる主張は結局被告人に不利益な主張に帰するものであるといえる。
結論
被告人に不利益な主張は適法な上告理由に当たらないため、上告は棄却される。
実務上の射程
本判決は、不利益変更禁止の原則(刑訴法402条)の趣旨を背景に、被告人側から被告人に不利益な法的解釈・適用を主張することを制限したものである。答案上は、併合罪の処理(刑法45条後段)を誤って一罪として処断されたとしても、それが被告人に有利に働いている限り、被告人側からこれを争うことはできないという「上告の利益」の観点から引用可能である。
事件番号: 昭和35(あ)1361 / 裁判年月日: 昭和35年10月18日 / 結論: 棄却
一 補導処分が競合した場合に、二以上の確定裁判があることとなつた日以後においては、一の補導処分についての執行が行われたときはその日数は他の補導の期間に算入せられるのであつて違法はない。 二 (上告趣意の要旨)被告人はさきに別件により現に補導処分の執行を受けている。従つて本件により又別個に補導処分を受けることになると二重…