本件のようないわゆる営業犯において、反復された同種行為が一罪として評価されるか否かは、その行為の時間的、場所的関係その他諸般の事情を目的論的見地に立つて考察し、社会通念上同一の営業活動と認められる限度内にあるか否かによつて決するのが相当である。しかるところ、原審の確定した事実によれば、被告人が昭和三七年一月一七日に宇都宮地裁において有罪判決を受けた事実は、被告人が昭和三六年三月初めごろから同年四月二八日までの間に、栃木県塩谷郡a町大字bc番地のdアパートに、AことBという婦女を居住させて、いわゆる管理売春をしたというのであるのに対し、本件事実は、被告人が昭和三七年一月二日ごろから同年五月上旬ごろまでの間に、福島市e町字fg番地のhヌードスタヂオに、Cという婦女を居住させて、いわゆる管理売春をしたというのであつて、両者間には、時間的にも場所的にも相当の隔たりがあり、また売春をさせた婦女も異なつており、社会通念上とうてい同一の営業活動とは認められないから、これを別罪に当るものとした原判断は相当である。
売春防止法第一二条違反罪において反復された同種行為が別罪を構成するものとされた事例。
売春防止法12条,刑法45条,刑法50条
判旨
営業犯における反復された同種行為の一罪性の判断は、時間的・場所的関係等の諸事情を目的論的に考察し、社会通念上同一の営業活動と認められるか否かによって決すべきである。本件では、前罪と本件事実との間に時間的・場所的隔たりがあり、対象婦女も異なることから、別罪を構成すると判断された。
問題の所在(論点)
売春防止法違反のような反復継続が想定される「営業犯」において、先行する有罪確定判決に係る事実と、その後に審理される事実が、実体法上一罪(包括一罪)の関係にあるといえるか。具体的には、その判断基準と本件へのあてはめが問題となる。
規範
いわゆる営業犯において、反復された同種行為が一罪として評価されるか否かは、その行為の時間的・場所的関係その他諸般の事情を目的論的見地に立って考察し、社会通念上同一の営業活動と認められる限度内にあるか否かによって決するのが相当である。
重要事実
被告人は、昭和37年1月17日に有罪判決を受けた前罪(昭和36年3月初旬から4月28日までの間、栃木県内のアパートで婦女Aを同居させ管理売春を行った事実)がある。これに対し、本件の公訴事実は、昭和37年1月2日頃から同年5月上旬頃までの間に、福島市内のヌードスタジオで婦女Cを居住させ管理売春を行ったというものである。被告人側は、これらの一罪性を主張して上告した。
あてはめ
本件における二つの事実は、①時間的側面において、前罪が昭和36年前半であるのに対し、本件は昭和37年に入ってからの行為であり相当の隔たりがある。②場所的側面において、前罪は栃木県内のアパート、本件は福島市内の施設であり、場所を異にする。③対象において、管理売春の対象となった婦女が別人である。これらの事情を目的論的・社会通念に照らして検討すると、両者は同一の営業活動の範囲内にあるとは認められず、独立した別個の犯罪行為と評価される。
結論
本件と前罪の事実は、社会通念上同一の営業活動とは認められないため別罪を構成する。したがって、前罪の確定判決の既判力は本件事実には及ばず、これを別罪として処断した原判断は正当である。
実務上の射程
集合犯(営業犯)における包括一罪の成否を判断するリーディングケースである。答案上は、営業犯の性質から直ちに一罪となるのではなく、「時間的・場所的近接性」「犯意の単一性・継続性」「行為態様の共通性」などを具体的事実から抽出し、本判例の「社会通念上同一の営業活動」という規範に即してあてはめる際に用いる。
事件番号: 昭和37(あ)3013 / 裁判年月日: 昭和39年6月1日 / 結論: 棄却
所論は、原判決は被告人の昭和三四年六月下旬頃から同三五年五月初旬頃までの管理売春の所為につき、これを一罪として一個の刑を科しているけれども、被告人には昭和三四年九月一九日宣告同年一〇月七日確定の道路交通取締法違反による罰金三、〇〇〇円及び昭和三五年一月二八日宣告同年二月一七日確定の同法違反による罰金四、〇〇〇円の二個の…