売春防止法第一三条第二項によつて懲役刑に併科すると定められた罰金刑は、刑罰であつて没収または追徴とはその性質を異にするから、被告人に罰金刑が併科された場合においても、右行為により取得した家賃相当額を刑法第一九条第一項第三号、第一九条ノ二によつて追徴することができ、かつその際いわゆる適正賃料額を控除することを要しない。
売春防止法第一三条第二項によつて懲役刑に罰金刑を併科し更に家賃相当額を追徴することの可否と追徴額の算定。
売春防止法13条2項,刑法19条1項3号,刑法19条ノ2
判旨
売春防止法13条2項に基づき懲役刑と罰金刑が併科される場合であっても、当該犯罪行為により取得した利益について刑法19条1項3号、19条の2による追徴を併せて行うことができ、その額から適正賃料相当額を控除する必要はない。
問題の所在(論点)
売春防止法違反の罪において、懲役刑と罰金刑が併科される場合に、犯罪行為によって得た利益(家賃等)を刑法19条1項3号等に基づき追徴することができるか。また、その追徴額を算定する際、いわゆる適正賃料額を控除する必要があるか。
規範
懲役刑に併科される罰金刑は刑罰であって、没収または追徴とはその性質を異にする。したがって、罰金刑が科される場合であっても、犯罪行為により取得した利益については別途没収・追徴の対象となり、その算定にあたってはいわゆる適正な対価分を控除すべきではない。
重要事実
被告人は売春防止法に違反する行為(場所提供等)を行い、その対価として家賃名目等の金員を取得した。原審は、被告人に対し売春防止法13条2項に基づき懲役刑と罰金刑を併科するとともに、犯罪行為により取得した家賃相当額全額を刑法19条1項3号、19条の2に基づき追徴することとした。これに対し弁護人は、罰金刑との併科や適正賃料額の不控除を不服として上告した。
あてはめ
罰金刑はあくまで制裁としての刑罰であり、犯罪による利得を剥奪する没収・追徴とは制度趣旨を異にする。そのため、両者が併用されることは何ら妨げられない。また、犯罪行為そのものの対価として取得した利益は、その全額が「犯罪行為により取得した物」に該当し、その一部が仮に適正な賃料の範囲内であったとしても、犯罪組成の不可分な一部をなす以上、控除を認めるべきではないと解される。
結論
被告人に罰金刑が併科された場合でも、犯罪により取得した家賃相当額を追徴することができ、かつ適正賃料額を控除する必要はない。
実務上の射程
没収・追徴と罰金の併科可能性を確認する際の基礎となる判例である。利得剥奪的性質を持つ追徴において「必要経費」や「適正価格」の控除を認めない考え方を示すものであり、薬物犯罪や売春事案等の利得剥奪を論じる際に応用できる。
事件番号: 昭和44(あ)2525 / 裁判年月日: 昭和46年11月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売春防止法11条2項の業として売春の場所を提供する罪(故意犯)と、同法14条に基づく事業主の両罰規定(過失犯)は、性質を異にする別罪であり、これらを包括一罪として処断することはできない。原判決には理由不備等の法令違反があるが、正当な法令適用によっても宣告刑が処断刑の範囲内であれば、原判決を破棄しな…