判旨
逮捕・勾留の手続に違憲、違法があったとしても、それは別個の救済方法によるべきであり、直ちに判決に影響を及ぼすものではない。また、逮捕から17日後の自白は、諸般の事情に照らし不当に長い拘禁後の自白とはいえず、任意性を欠くとは認められない。
問題の所在(論点)
1. 逮捕・勾留という先行手続の違法が、判決の効力に影響を及ぼすか。 2. 逮捕から17日後の自白が「不当に長く拘禁された後の自白」として証拠能力を否定されるか。
規範
1. 逮捕・勾留手続の適法性と判決への影響:身柄拘束手続に違法があっても、当該違法が判決に直接影響を及ぼさない限り、上告理由とはならない。 2. 自白の任意性(不当な拘禁):不当に長く拘禁された後の自白(憲法38条2項、刑訴法319条1項)に該当するか否かは、事案の内容、手続の経過、その他諸般の事情を総合して判断する。
重要事実
被告人が逮捕・勾留の違憲・違法を主張して上告した事案。また、被告人が逮捕から17日後に検察官に対して作成した上申書(自白)について、不当に長い拘禁後の自白であり任意性を欠くこと、および当該自白が唯一の証拠であることを理由に有罪判決の不当を訴えた。
あてはめ
1. 逮捕・勾留の違法について:仮に身柄拘束に違憲・違法があったとしても、それは判決そのものの当否を左右するものではなく、別個の救済手段によるべきである。 2. 自白の任意性について:被告人の上申書は逮捕から17日後のものであり、事案の内容や手続経過を勘案すると、不当な長期拘禁による自白とはいえない。また、記録によれば当該自白が強制に基づくなど任意性を欠く事実も認められない。さらに、原判決は自白のみを証拠としたものではない。
結論
被告人の主張には上告理由がなく、本件上告を棄却する。
実務上の射程
逮捕・勾留の違法と本案判決の関係を分離する法理を示す。刑事訴訟実務において、身柄拘束の違法を理由に有罪判決そのものを争うことは原則として困難であることを意味する。また、自白の証拠能力については、単なる拘禁期間の長さだけでなく諸般の事情を総合考慮すべきとした。
事件番号: 昭和54(あ)673 / 裁判年月日: 昭和54年7月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保釈が許されないことにより証人審問権(憲法37条2項)の行使が事実上困難になったとしても、直ちに同条違反とはならず、自白の任意性が認められる限り憲法38条1項にも違反しない。 第1 事案の概要:被告人が刑事裁判において上告し、保釈が許されなかったために証人審問権を行使できなかったこと、および自白の…