自から売春の相手方となる意思のある甲から「よい女はおらんか」と売春の周旋を依頼された被告人が、これに応じて「大将の気に入る女を世話しましよう。二七、八歳の年増のいいのがおりますよ。身代は二、〇〇〇円です。」と言い、甲が「一、五〇〇円にまけろ。」と言うのに対して「まけられません。」と答え、さらに甲が「泊るところはどこだ。」と言うのに応じて「泊るところはすぐそこの乙旅館です。」と言つて甲をつれて歩いた行為は、売春防止法第六条第二項第一号にいわゆる勧誘にあたる。
売春防止法第六条第二項第一号にいわゆる勧誘にあたるとされた事例。
売春防止法6条2項1号
判旨
刑事訴訟法321条1項3号が憲法37条2項の証人尋問権に違反しないこと、及び売春防止法6条2項1号の「勧誘」の該当性について示した。伝聞例外の要件である特信情況の存否は事実認定の問題であり、適切に認定されている限り合憲である。
問題の所在(論点)
1. 刑訴法321条1項3号による伝聞証拠の採用は、憲法37条2項の反対尋問権の保障に反し違憲ではないか。 2. 売春防止法6条2項1号の「勧誘」の意義および該当性の判断は正当か。
規範
1. 刑事訴訟法321条1項3号の規定は、憲法37条2項が保障する証人尋問権に違反しない。 2. 供述調書の証拠能力が認められるためには、同条項所定の「特に信用すべき情況」(特信情況)の下にされたものであることが必要である。 3. 売春防止法6条2項1号にいう「勧誘」とは、売春の相手方となるよう誘いかける行為を指す。
重要事実
被告人は売春防止法違反等の罪で起訴された。第一審において、供述者Aの検察官面前等での供述調書が刑訴法321条1項3号に基づき証拠として採用された。原審(二審)は、Aの供述が「特に信用すべき情況の下にされたものである」と認定し、第一審の判断を是認した。また、被告人の所為が同法6条2項1号の「勧誘」に該当すると判断された。これに対し、弁護人は刑訴法321条1項3号の違憲性および勧誘の該当性、特信情況の欠如を理由に上告した。
あてはめ
1. 憲法37条2項の趣旨に照らし、刑事訴訟法321条1項3号は合理的な例外規定として既に憲法違反でないとの判例(最大判昭27.4.9)が確立している。 2. 特信情況の有無については、原判決において供述の外部的情況に基づき適正に認定されており、これを否定する特段の事情は認められない。 3. 被告人の具体的な所為(詳細は判決文からは不明だが、売春の誘いかけに類する行為)は、売春防止法6条2項1号の「勧誘」の解釈に照らして相当である。
結論
本件上告を棄却する。刑訴法321条1項3号は合憲であり、被告人の行為を売春防止法上の勧誘と認めた原判断は妥当である。
実務上の射程
憲法37条2項と伝聞例外の関係を論じる際の「合憲性」の根拠として引用可能。また、売春防止法上の「勧誘」の意義を肯定する際の簡潔な実例として機能する。ただし、特信情況の具体的判断については個別事情に依存するため、本判決はその枠組みを確認するに留まる。
事件番号: 昭和51(あ)427 / 裁判年月日: 昭和53年5月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売春行為者自体を処罰せず売春場所提供者のみを処罰の対象とする立法政策は憲法14条1項に違反せず、刑事訴訟法321条1項2号の規定も憲法37条2項に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は売春を行う場所を提供して売春を助長したとして処罰されたが、これに対し弁護人は、売春行為者自体を処罰せず助長者のみ…