公共企業体等労働関係法第一七条に違反してなされた争議行為に対しては、労働組合法第一条第二項の適用はない。
公共企業体等労働関係法第一七条違反の争議行為と労働組合法第一条第二項。
公共企業体等労働関係法17条,労働組合法1条2項,刑法95条1項,刑法95条204条,刑法95条35条
判旨
公共企業体等の職員による争議行為は公労法17条1項により全面的に禁止されており、争議権自体が否定されているため、当該行為に労働組合法1条2項の刑事免責を適用する余地はない。
問題の所在(論点)
公共企業体等労働関係法17条1項により争議行為を禁止されている公共企業体等の職員に対し、労働組合法1条2項の刑事免責規定を適用することができるか。
規範
公共企業体等の職員については、国家経済および国民福祉に対する企業の重要性に鑑み、法律(公労法17条1項)によって同盟罷業等の争議行為が禁止されている。このように争議権自体が否定されている以上、当該職員による争議行為について正当性の限界を論ずる余地はなく、労働組合法1条2項(正当な組合活動の刑事免責)は適用されない。
重要事実
被告人は、公共企業体等の職員として争議行為を行った際、刑法95条1項(公務執行妨害)および204条(傷害)に該当する行為に及んだ。原審は、公労法17条に違反する争議行為であっても労組法1条2項の適用があるとした上で、本件は正当行為に当たらないとして有罪判決を下した。これに対し、検察官が原審の労組法解釈の誤りを理由に上告した事案である。
事件番号: 昭和41(あ)1510 / 裁判年月日: 昭和43年3月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公共企業体等労働関係法17条1項に違反してなされた争議行為であっても、労働組合法1条2項の適用は排除されないが、暴力の行使を伴う行為は正当性の限界を越えるため刑事免責の対象とならない。 第1 事案の概要:被告人らは、公共企業体等労働関係法17条1項の規定に違反して争議行為を行った。その際、被告人ら…
あてはめ
公労法17条1項は、公共企業体等の職員による業務の正常な運営を阻害する一切の行為を禁止している。この制限は、企業の公共的性格に由来するものであり憲法28条に違反しない。このように法が争議権を否定している以上、禁止された行為を「正当な行為」として刑事免責の対象とすることは法体系上なし得ない。したがって、原判決が労組法1条2項の適用を肯定した解釈は誤りである。
結論
公共企業体等の職員の争議行為に労働組合法1条2項の適用はない。ただし、本件原判決は最終的に被告人の行為を正当行為ではないと判断して処断しており、結論において正当であるため、上告を棄却する。
実務上の射程
公労法下の全逓東京中郵事件判決(最広判昭41.10.26)以前の、いわゆる「全農林警職法事件(最広判昭48.4.25)」等へと連なる、争議行為の全面禁止・刑事免責否定の法理を示すものである。答案上は、公務員等の争議行為禁止と刑事免責の要否を論じる際の初期の厳格な判例として位置付けられる。
事件番号: 昭和42(あ)1431 / 裁判年月日: 昭和42年11月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働組合法1条2項が定める刑事免責の対象となる労働組合の正当な行為には、暴力の行使は含まれない。 第1 事案の概要:被告人が労働組合活動の一環として行為に及んだ際、その行為態様が身体に対する不当な力の行使を伴うものであった事案。第一審判決において、被告人の本件所為が「暴力の行使」であることが事実認…