一 弁護人の所論各点に関する原審の判断は正当として首肯できる。 二 (原判決の要旨)時計の如くその銘柄、型式、石数、側等による種別の多数に上る品物にあつては、それらによつて他から完全に区別し得る程度に表示するのは甚だ困難であつて、判決にこれを表示するに当つては、要するに被告人が同一物につき再度起訴される虞れがなく、又その価額を一応算定できる程度にこれを特定表示すれば足りる。 三 起訴にかかる時計の現品が存在せず、その銘柄、品種(男物か女物かの区別)のみ明らかで、その他、型式等の詳細が判明しない本件の如き場合にあつては、でき得る限りこれと近似した時計を選び、その価格により追徴額を算定したとしても、これを以て違法とはなし難い。しかもその内最低価格の物につきその価格を鑑定し、原判定はそれによつて追徴額を決定したものであるから相当である。
一 密輸時計の判示程度 二 右時計の追徴額の算定
関税法110条,関税法118条,刑訴法335条1項,刑訴法378条3号
判旨
被告人ではない第三者の所有物について、判決において当該第三者の所有であると認定されていない場合には、没収による財産権侵害(憲法29条1項違反)を主張する前提を欠く。
問題の所在(論点)
被告人以外の第三者が所有すると主張される物件の没収について、判決が当該第三者の所有を認定していない場合に、憲法29条1項違反(財産権の侵害)を理由として上告することができるか。
規範
没収の対象が被告人以外の第三者の所有物であるとして憲法29条1項違反を主張するためには、前提として、判決において当該物件が当該第三者の所有であると認定されていることを要する。
重要事実
被告人A、Bらが共謀して貨物を密輸し、関税を免れようとした事案において、原審は当該物件を没収した。弁護人は、没収された物件はD株式会社の所有であるから、第三者所有物の没収として憲法29条1項に違反すると主張した。しかし、第一審及び原判決の判示では、AとBが個人の立場で密輸に関与したとされており、D株式会社を経営していたという記載は単なる属性説明に過ぎなかった。
事件番号: 昭和29(あ)2757 / 裁判年月日: 昭和33年2月13日 / 結論: 棄却
犯人が旧関税法の密輸出行為の用に供した第三者所有の船舶については、所有者がその占有を犯人に移す際、それが密輸出の用に供せられることの事情につき善意であつたときは、旧関税法第八三条第一項により没収するをえないものである。
あてはめ
本件において、一審及び原判決は反則貨物がD株式会社の所有であるとは判示しておらず、むしろ被告人らが「個人の立場から」密輸をなしたものと判示している。被告人らが会社を経営していたとの判示は単なる事情説明であり、そこから物件が会社所有であると推認することはできない。したがって、第三者の財産権侵害をいう憲法の主張は、その前提となる事実を欠いている。
結論
憲法29条1項違反の主張は前提を欠き適法な上告理由に当たらないため、本件上告を棄却する。
実務上の射程
第三者所有物没収の違憲性(最高裁昭和37年11月28日大法廷判決の直前事案)が争われる際、前提となる「所有権の帰属」の認定の重要性を示す。実務上は、没収の対象が誰に帰属するかという事実認定が憲法判断の分水嶺となることを示唆している。
事件番号: 昭和26(あ)1897 / 裁判年月日: 昭和32年11月27日 / 結論: 破棄差戻
一 所論は原審において主張判断を経ない事項であるから、上告適法の理由とならない。 二 (所論の要旨)原判決の支持する第一審判決によれば「関税法第八三条第一項により主文第二項記載の物件を没収する」と摘示しており、右物件中にはAが包含せられている。これによつてこれを見れば、右法条中犯人の占有に係るものとして、右船舶を没収し…