自動車の運転練習のためであつても、これを反覆継続して行なうときは、自動車運転の業務に従事しているものと理解すべきである。
自動車の運転練習と業務。
刑法211条
判旨
自動車の運転練習を目的とする行為であっても、これを反復継続して行うときは、刑法211条後段(旧法)の「業務」に該当する。
問題の所在(論点)
自動車の運転免許を所持せず、かつ練習を目的として運転する場合であっても、刑法211条(業務上過失致死傷罪)にいう「業務」に該当するか。
規範
刑法上の「業務」とは、人がその社会生活上の地位に基づき反復継続して従事する事務をいう。生命・身体に危害を加えるおそれのある事務については、その適正を確保すべき義務を課す実質的必要性があるため、営利性や公務性、あるいは免許の有無等の法的資格を問わない。
重要事実
被告人が自動車の運転練習を行う過程において、過失により人を死傷させた事案である。被告人は、当該運転が免許取得前の練習目的であったことから、社会生活上の地位に基づき反復継続して行われる「業務」には当たらないと主張して上告した。
あてはめ
事件番号: 昭和33(あ)1995 / 裁判年月日: 昭和34年4月23日 / 結論: 棄却
被告人は第一審判決判事のように自動車の練習並に車洗いのため十数回以上に亘つて小型自動四輪車を運転していたというのであるから予て自動車運転の業務に従事していたものと認めて毫も妨けないものである。
自動車の運転は、その性質上、他人の生命・身体に危険を及ぼすおそれがある事務である。たとえ運転の目的が「練習」であったとしても、それを反復継続して行う意思をもって従事する以上、その運転者は安全運転を尽くすべき社会的な注意義務を負う地位にあるといえる。したがって、練習目的であっても反復継続性の実態がある限り、同条の「業務」に該当すると判断される。
結論
自動車の運転練習であっても、反復継続して行われるときは業務上過失致死傷罪の「業務」に該当する。
実務上の射程
本判決は、無免許かつ練習目的の運転にも業務性を認めることで、業務上過失致死傷罪の広範な適用を認めた。司法試験においては、本罪の「業務」の定義を論じる際、営利性や免許の有無を問わない根拠として、本判決の趣旨を引用することが可能である。
事件番号: 昭和37(あ)2772 / 裁判年月日: 昭和39年1月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法211条前段の業務上過失致死傷罪は、加害者・被害者の別や運転資格の有無を問わず、業務上の必要な注意を怠って人を死傷させた者すべてに適用される。同条の適用は、法の下の平等(憲法14条)や適正手続(憲法13条)に反するものではない。 第1 事案の概要:被告人は、自動車の運転に関して業務上の必要な注…
事件番号: 昭和37(あ)2816 / 裁判年月日: 昭和39年11月24日 / 結論: 棄却
一 業務上過失致死傷罪にいわゆる業務につき、それが社会生活上の地位に基づきなされることを要しないとの原判示は相当でないが、原判決は被告人が自動車の運転を反覆断続して行なつていた事実を認定しているところ、右事実はとりもなおさず社会生活上の地位にほかならないから、結局原判決の右法令解釈の誤りは判決に影響を及ぼさない。 二 …
事件番号: 昭和29(あ)2686 / 裁判年月日: 昭和30年3月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法上の「業務」とは、社会生活上の地位に基づき、反復継続して行われる事務をいい、本件のような車両の運転行為もこれに該当する。 第1 事案の概要:被告人が車両を運転して事故を起こし、業務上過失致死傷罪(当時の刑法211条)に問われた。被告人側は、当該運転行為が刑法上の「業務」に該当しないと主張して上…
事件番号: 昭和35(あ)1938 / 裁判年月日: 昭和36年1月23日 / 結論: 棄却
農業を営む者が、自動三輪車の運転免許を受け、平素より自動三輪車により農産物、肥料等の運搬をしていた場合、その自動三輪車運転が、たまたま、農産物、肥料等の運搬に全く関係なく、自己の属する消防団の消防機械の定例手入指揮の帰途に為されたものであつても、その運転に関し注意義務を欠いたため人を傷害したときは、業務上過失傷害罪が成…