被告人は第一審判決判事のように自動車の練習並に車洗いのため十数回以上に亘つて小型自動四輪車を運転していたというのであるから予て自動車運転の業務に従事していたものと認めて毫も妨けないものである。
自動車運転の業務に従事していたものと認められる事例。
刑法211条
判旨
自動車の運転練習や洗車のために十数回以上にわたって小型自動車を運転した実績がある場合、社会生活上の地位に基づき反復継続して行われる事務として「業務」性を肯定できる。
問題の所在(論点)
特定の目的(練習や洗車)のために行われる一時的な運転行為が、刑法上の「業務」に該当するか。特に、反復継続性の程度が「業務」性を基礎付けるかが問題となる。
規範
刑法上の「業務」とは、人が社会生活上の地位に基づき反復継続して従事する事務を指す。自動車の運転において、それが娯楽や練習目的であっても、一定の回数以上反復して行われている実態があれば、その運転行為は「業務」に該当する。
重要事実
被告人は、自動車の運転練習および洗車を行うことを目的として、十数回以上にわたって小型自動四輪車を運転していた。この運転行為の最中に事故(詳細は判決文からは不明)を起こし、業務上過失致死傷罪等の成否が問題となった。
事件番号: 昭和34(あ)1778 / 裁判年月日: 昭和35年1月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】業務上過失致死罪における「業務」とは、本件犯行直前にも数回にわたり自動三輪車の運転を反復継続して行っていた事実があれば肯定される。また、自白の補強証拠は犯罪構成要件たる事実全体について存在すれば足り、自白の各部分について個別に要するものではない。 第1 事案の概要:被告人が自動三輪車を運転中に過失…
あてはめ
被告人は、単発の運転ではなく「十数回以上」にわたって継続的に小型自動車を運転している。この事実は、単なる一時的な動作を超え、社会生活上反復継続して行われる事務としての実態を備えているといえる。したがって、練習や洗車という目的の如何にかかわらず、予て自動車運転の業務に従事していたものと認められる。
結論
被告人の運転行為は「業務」に該当する。したがって、業務上過失致死傷罪(当時の刑法211条)の適用を認めた原判決は正当である。
実務上の射程
本判決は、業務上過失致死傷罪における「業務」の定義のうち「反復継続性」を広く認めたものである。現在の実務においても、無免許運転の練習中であっても、一定回数の実績があれば業務性が肯定されるという論拠として機能する。
事件番号: 昭和29(あ)2686 / 裁判年月日: 昭和30年3月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法上の「業務」とは、社会生活上の地位に基づき、反復継続して行われる事務をいい、本件のような車両の運転行為もこれに該当する。 第1 事案の概要:被告人が車両を運転して事故を起こし、業務上過失致死傷罪(当時の刑法211条)に問われた。被告人側は、当該運転行為が刑法上の「業務」に該当しないと主張して上…
事件番号: 昭和35(あ)1938 / 裁判年月日: 昭和36年1月23日 / 結論: 棄却
農業を営む者が、自動三輪車の運転免許を受け、平素より自動三輪車により農産物、肥料等の運搬をしていた場合、その自動三輪車運転が、たまたま、農産物、肥料等の運搬に全く関係なく、自己の属する消防団の消防機械の定例手入指揮の帰途に為されたものであつても、その運転に関し注意義務を欠いたため人を傷害したときは、業務上過失傷害罪が成…
事件番号: 昭和37(あ)2816 / 裁判年月日: 昭和39年11月24日 / 結論: 棄却
一 業務上過失致死傷罪にいわゆる業務につき、それが社会生活上の地位に基づきなされることを要しないとの原判示は相当でないが、原判決は被告人が自動車の運転を反覆断続して行なつていた事実を認定しているところ、右事実はとりもなおさず社会生活上の地位にほかならないから、結局原判決の右法令解釈の誤りは判決に影響を及ぼさない。 二 …
事件番号: 昭和37(あ)1277 / 裁判年月日: 昭和37年12月27日 / 結論: 棄却
自動車の運転練習のためであつても、これを反覆継続して行なうときは、自動車運転の業務に従事しているものと理解すべきである。