一 業務上過失致死傷罪にいわゆる業務につき、それが社会生活上の地位に基づきなされることを要しないとの原判示は相当でないが、原判決は被告人が自動車の運転を反覆断続して行なつていた事実を認定しているところ、右事実はとりもなおさず社会生活上の地位にほかならないから、結局原判決の右法令解釈の誤りは判決に影響を及ぼさない。 二 業務上過失致死傷罪の成立には、致死傷の結果発生について予見の可能性、回避の可能性を要しないとする原判示は相当でないが、原判決は機関車と自動車の接触事故の発生について予見可能、回避可能であつたとの事実を認定しているから、本件においては、右事実は致死傷の結果発生の予見可能性、回避可能性と同一に帰するものと認められるので、結局原判決の右法令解釈の誤りは判決に影響を及ぼさない。
一 法令解釈の誤りが判決に影響を及ぼさないとされた事例。―業務上過失致死傷罪にいわゆる業務につきそれが社会生活上の地位に基づきなされたことの要否。 二 同事例。―前同罪の成立と結果発生の予見可能性、回避可能性の要否。
刑法211条,刑訴法411条1号
判旨
刑法上の「業務」とは社会生活上の地位に基づき反復継続して行われることを要し、また業務上過失致死傷罪の成立には結果発生の予見可能性および回避可能性を要する。
問題の所在(論点)
1. 刑法211条の「業務」に社会生活上の地位が必要か。2. 業務上過失致死傷罪の成立に、結果発生に対する予見可能性・回避可能性が必要か。
規範
業務上過失致死傷罪(刑法211条)にいう「業務」とは、社会生活上の地位に基づき反復継続して行われる事務を指す。また、同罪の成立には、過失犯の一般的要件として、致死傷の結果発生に対する予見可能性および回避可能性を具備していることを要する。
重要事実
被告人が自動車の運転に従事し、それを反復継続して行っていたところ、機関車と自動車の接触事故を発生させ、他者を死傷させた。原審は、「業務」の成立に社会生活上の地位を不要とし、かつ致死傷の結果発生についての予見・回避可能性も不要であると判断して被告人を処断した。
事件番号: 昭和37(あ)2772 / 裁判年月日: 昭和39年1月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法211条前段の業務上過失致死傷罪は、加害者・被害者の別や運転資格の有無を問わず、業務上の必要な注意を怠って人を死傷させた者すべてに適用される。同条の適用は、法の下の平等(憲法14条)や適正手続(憲法13条)に反するものではない。 第1 事案の概要:被告人は、自動車の運転に関して業務上の必要な注…
あてはめ
1. 被告人は自動車の運転を反復継続して行っていた事実が認められる。この事実は「社会生活上の地位」に基づきなされる事務に他ならず、原審の法令解釈には誤りがあるが、結論として業務性は認められる。 2. 本件では、機関車と自動車の接触事故という事態について予見・回避が可能であったと認定されており、これは致死傷の結果発生に対する予見・回避可能性と同一に帰するものといえる。したがって、結果発生の予見・回避可能性も認められる。
結論
被告人に業務上過失致死傷罪が成立する。原審の法令解釈には誤りがあるが、判決に影響を及ぼさないため上告は棄却される。
実務上の射程
業務概念における「社会生活上の地位」の必要性と、過失責任の根拠としての「結果予見・回避可能性」の必要性を確認した。答案上、業務の定義を書く際の規範として、また過失の判断枠組みを示す際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和29(あ)2686 / 裁判年月日: 昭和30年3月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法上の「業務」とは、社会生活上の地位に基づき、反復継続して行われる事務をいい、本件のような車両の運転行為もこれに該当する。 第1 事案の概要:被告人が車両を運転して事故を起こし、業務上過失致死傷罪(当時の刑法211条)に問われた。被告人側は、当該運転行為が刑法上の「業務」に該当しないと主張して上…
事件番号: 昭和45(あ)2031 / 裁判年月日: 昭和47年3月28日 / 結論: 棄却
道路交通法一一七条の罪の成立に必要な事実の認識は、必ずしも確定的な認識であることを要せず、未必的な認識でも足りる。
事件番号: 昭和46(あ)1878 / 裁判年月日: 昭和47年4月21日 / 結論: 棄却
一 第一審判決判示第一の事実につき、被告人の過失と被害者の致死の結果との間に因果関係を認めた原判決の判断は、その認定の事実関係のもとにおいては、正当である。 二 (原判示の要旨)被告人は深夜普通乗用自動車を運転して原判示道路を時速約四〇キロメートルで進行中、対向車の前照灯に眩惑されたにもかかわらず減速、徐行の措置をとら…