判旨
刑法211条前段の業務上過失致死傷罪は、加害者・被害者の別や運転資格の有無を問わず、業務上の必要な注意を怠って人を死傷させた者すべてに適用される。同条の適用は、法の下の平等(憲法14条)や適正手続(憲法13条)に反するものではない。
問題の所在(論点)
刑法211条前段(業務上過失致死傷罪)の適用対象について、運転資格の有無や加害者の属性によって限定されるべきか。また、同条の規定が憲法13条および14条に違反するか。
規範
刑法211条前段(業務上過失致死傷罪)は、加害者であるか被害者であるかを問わず、また運転資格の有無等の属性にかかわらず、およそ「業務上の必要な注意を怠って人を死傷に致した者」を処罰する規定である。同条は、特定の身分や資格に限定されることなく、業務上の注意義務を負う者がその義務に違反した場合には一律に適用される。
重要事実
被告人は、自動車の運転に関して業務上の必要な注意を怠り、人を死傷させたとして刑法211条前段により起訴された。被告人側は、同条の適用が特定の対象に限定されない抽象的規定であり、かつ加害者の属性(運転資格の有無等)を考慮せずに処罰することは憲法13条(幸福追求権・適正手続)および憲法14条(法の下の平等)に違反する旨を主張して上告した。
あてはめ
刑法211条前段は、その文言上、業務に従事する者が注意義務を怠った場合に処罰することを定めたものである。本件被告人のように、自動車運転という業務に従事して人を死傷させた以上、運転資格の有無等の個人的事情にかかわらず、同条の構成要件に該当する。したがって、同条を適用して被告人を処罰することは、何ら法の下の平等の原則に反するものではなく、また不当に抽象的な規定による処罰でもない。被告人の独自の解釈に基づく違憲の主張は、前提を欠く不適法なものである。
結論
被告人を刑法211条前段により有罪とすることは、憲法13条および14条に違反せず、適法である。
事件番号: 昭和37(あ)2816 / 裁判年月日: 昭和39年11月24日 / 結論: 棄却
一 業務上過失致死傷罪にいわゆる業務につき、それが社会生活上の地位に基づきなされることを要しないとの原判示は相当でないが、原判決は被告人が自動車の運転を反覆断続して行なつていた事実を認定しているところ、右事実はとりもなおさず社会生活上の地位にほかならないから、結局原判決の右法令解釈の誤りは判決に影響を及ぼさない。 二 …
実務上の射程
業務上過失致死傷罪の主体が「業務に従事する者」全般であることを確認した判例である。司法試験においては、無免許運転者であっても同罪が成立することを当然の前提としつつ、憲法適合性や平等原則が問題となった際の根拠として参照し得る。
事件番号: 昭和30(あ)480 / 裁判年月日: 昭和32年3月26日 / 結論: 棄却
刑法第二一一条は憲法第一四条に違反しない。
事件番号: 昭和45(あ)2031 / 裁判年月日: 昭和47年3月28日 / 結論: 棄却
道路交通法一一七条の罪の成立に必要な事実の認識は、必ずしも確定的な認識であることを要せず、未必的な認識でも足りる。
事件番号: 昭和29(あ)2686 / 裁判年月日: 昭和30年3月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法上の「業務」とは、社会生活上の地位に基づき、反復継続して行われる事務をいい、本件のような車両の運転行為もこれに該当する。 第1 事案の概要:被告人が車両を運転して事故を起こし、業務上過失致死傷罪(当時の刑法211条)に問われた。被告人側は、当該運転行為が刑法上の「業務」に該当しないと主張して上…