判旨
業務上過失致死罪における「業務」とは、本件犯行直前にも数回にわたり自動三輪車の運転を反復継続して行っていた事実があれば肯定される。また、自白の補強証拠は犯罪構成要件たる事実全体について存在すれば足り、自白の各部分について個別に要するものではない。
問題の所在(論点)
1. 本件犯行直前に数回運転していたに過ぎない場合に「業務」といえるか。 2. 憲法38条3項に基づき、自白の各部分について個別に補強証拠が必要か。
規範
刑法上の「業務」とは、社会生活上の地位に基づき、反復継続して行われる事務をいう。また、憲法38条3項の補強証拠については、被告人の自白と補強証拠が相まって全体として犯罪構成要件たる事実を認定できる場合には、自白の各部分について一々個別の補強証拠を要するものではない。
重要事実
被告人が自動三輪車を運転中に過失により人を死亡させたとして、業務上過失致死罪で起訴された。被告人は本件犯行の直前にも数回にわたり、同様に自動三輪車の運転を反復継続して行っていた事実が認められた。被告人は自白をしていたが、弁護人は自白の各部分に対する補強証拠の不足や、業務性の認定について不服を申し立て上告した。
あてはめ
1. 被告人は本件犯行直前において、すでに数回にわたり自動三輪車の運転を反復継続して行っていた。この事実は、社会生活上の地位に基づき反復継続して行われる事務としての性格を有しているといえるため、業務性が認められる。 2. 第一審判決は被告人の自白のほかに複数の補強証拠を掲げており、それらが相まって犯罪構成要件たる事実を全体として認定できる状態にある。したがって、自白の各細部について個別の裏付けがなくとも、補強法則には反しない。
結論
被告人に業務上過失致死罪の成立を認めた第一審判決は正当であり、自白の補強法則に関する憲法違反の主張も理由がないため、上告を棄却する。
事件番号: 昭和29(あ)2686 / 裁判年月日: 昭和30年3月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法上の「業務」とは、社会生活上の地位に基づき、反復継続して行われる事務をいい、本件のような車両の運転行為もこれに該当する。 第1 事案の概要:被告人が車両を運転して事故を起こし、業務上過失致死傷罪(当時の刑法211条)に問われた。被告人側は、当該運転行為が刑法上の「業務」に該当しないと主張して上…
実務上の射程
業務の「反復継続性」について、犯行直前の数回の実績でも足りることを示した事例として、過失犯の主体認定に活用できる。また、補強法則における「実質説(全体合致説)」を確認する判例として、証拠法上の議論において極めて重要な射程を持つ。
事件番号: 昭和33(あ)1995 / 裁判年月日: 昭和34年4月23日 / 結論: 棄却
被告人は第一審判決判事のように自動車の練習並に車洗いのため十数回以上に亘つて小型自動四輪車を運転していたというのであるから予て自動車運転の業務に従事していたものと認めて毫も妨けないものである。
事件番号: 昭和29(あ)3598 / 裁判年月日: 昭和30年2月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事裁判における事実認定において、第一審判決の証拠判断に合理的な理由があり、それを覆すべき証拠がない場合には、控訴審が第一審の認定を正当として維持することは適法である。 第1 事案の概要:被告人が犯行を行ったとする第一審判決に対し、弁護人は証拠判断および事実認定の違法、憲法31条違反、理由の食い違…
事件番号: 昭和28(あ)5051 / 裁判年月日: 昭和29年3月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白が存在する場合、実況見分書等の客観的証拠が自白の真実性を担保する補強証拠となり得る。自白とこれら補強証拠を総合して犯罪事実を認定することは、憲法上の証拠法則に反しない。 第1 事案の概要:被告人が犯行を認める自白をしていた。第一審判決は、この自白に加えて、犯行現場や状況を記録した実況見…
事件番号: 昭和37(あ)2816 / 裁判年月日: 昭和39年11月24日 / 結論: 棄却
一 業務上過失致死傷罪にいわゆる業務につき、それが社会生活上の地位に基づきなされることを要しないとの原判示は相当でないが、原判決は被告人が自動車の運転を反覆断続して行なつていた事実を認定しているところ、右事実はとりもなおさず社会生活上の地位にほかならないから、結局原判決の右法令解釈の誤りは判決に影響を及ぼさない。 二 …