一 原審の認定した事実関係の下においては、原判決が被告人等の本件各所為は、いわゆる森林窃盗に該当せず、普通の窃盗罪を構成すると判示したのは正当である。 二 (原判決の要旨)第一審判決第一第二の現場は(註、各現場は何れも幅員三メートル位の林道に接した面積二〇〇坪位の所謂土場であつて、右第一の現場と被害木材の生育した林叢との間には約千メートルの距離があり、また第二の現場と被害木材の生育した林叢との間には谷が介在し、各被害木材にすべてケーブルを以てその伐採場所から各現場まで搬出集積されていたものである。)森林法第一九七条にいわゆる森林には該当せず、かつ被告人等が窃取した原判示木材はいずれもその集積した場所より遠く隔絶した林叢において生育していたものであることが認められるので、本件木林の窃取を以て、森林法第一九七条のいわゆる森林においてその産物を窃取した場合に該当する犯罪であるということはできないというべきである。
森林窃盗に該当せず窃盗罪を構成するとされた事例。
刑法235条,森林法197条
判旨
森林法197条の森林窃盗罪は、森林においてその産物(未伐採の樹木等)を窃取する場合に成立するものであり、既に伐採され搬出のため集積された木材を窃取する行為には、刑法235条の窃盗罪が成立する。
問題の所在(論点)
森林内で伐採され集積された木材を窃取する行為について、特別法である森林法197条(森林窃盗罪)と、一般法である刑法235条(窃盗罪)のいずれが適用されるか。
規範
森林法上の森林窃盗罪(森林法197条)は、森林の保全およびその産物の保護を目的とする特別罪である。これに対し、既に伐採されて所有者の占有下に置かれ、木材としての形態を成している産物を窃取する行為は、森林の産物自体の窃取ではなく動産の窃取としての性質が強いため、森林法ではなく刑法上の普通窃盗罪(刑法235条)が適用される。
重要事実
被告人らは、森林内において他人が所有し、既に伐採された上で搬出のために一定の場所に集積されていた木材を盗み出した。被告人らは、この行為が森林法に規定される森林窃盗罪に該当すると主張したが、原審はこれを否定し、刑法の普通窃盗罪の成立を認めた。
あてはめ
森林窃盗罪が対象とするのは、原則として森林においてその産物(立木や土砂等)をその設置場所において窃取する行為である。しかし、本件において窃取の対象となったのは、既に伐採され、搬出を目的として一箇所に集積されていた木材である。この状態にある木材は、もはや「森林の産物」という性質を超え、一般の動産としての性質を強く有している。したがって、森林法を適用すべき特別の必要性はなく、刑法上の窃盗罪をもって処断すべきである。
結論
被告人らの行為は、森林法上の森林窃盗罪には該当せず、刑法上の普通窃盗罪を構成する。
実務上の射程
特別法(森林法)と一般法(刑法)の適用関係が問題となる場面で、客体の状態(加工の有無や占有の態様)から特別法の予定する保護範囲に含まれるかを判断する際の指針となる。森林内の産物であっても、高度に占有が確立された動産については一般刑法が適用されることを示唆している。
事件番号: 昭和40(あ)311 / 裁判年月日: 昭和40年5月29日 / 結論: 棄却
窃取の意思をもつて森林の産物である立木を伐採したときは、その伐採行為の終了と同時に森林窃盗罪の既遂となる。