刑法二四二条は、森林法一九七条の森林窃盗罪に適用されない。
森林窃盗罪と刑法二四二条
憲法31条,森林法(昭和49年法律39号による改正前のもの)197条,刑法235条,刑法242条
判旨
刑法242条は、同法36章の罪に限定して適用される処罰範囲の拡張規定であり、森林法に準用規定がない以上、同法197条の森林窃盗罪に同条を適用することは罪刑法定主義に反し許されない。
問題の所在(論点)
刑法242条(他人の占有する自己の財物を「他人の財物」とみなす規定)が、明文の準用規定がないにもかかわらず、森林法197条の森林窃盗罪に適用されるか。
規範
刑法242条は、同法36章の窃盗及び強盗の罪の処罰範囲を拡張する例外規定であり、その適用範囲は条文上「本章ノ罪ニ付テハ」と限定されている。したがって、別個の法律である森林法において同条を準用する旨の明文の規定がない限り、森林法上の罪に対して同条を適用することは、罪刑法定主義の原則に照らし許されない。
重要事実
被告人が、森林法197条の森林窃盗罪に問われた事案において、当該立木が他人の占有に属する自己の財物であった。検察官は、刑法242条を適用(または類推適用)することにより、自己の財物であっても他人が占有する場合には森林窃盗罪が成立すると主張して上告した。
あてはめ
刑法242条は、その文言上「本章(第36章)ノ罪」に限定して適用される規定である。森林法は刑法とは別個の特別法であり、森林窃盗罪(森林法197条)について刑法242条を準用する旨の規定は存在しない。明文の規定を欠く中で処罰範囲を拡張する同条を適用することは、刑罰法規の厳格な解釈を求める罪刑法定主義の要請に反する。したがって、森林法上の罪に刑法242条を適用する余地はない。
結論
森林窃盗罪に刑法242条は適用されない。したがって、他人の占有する自己の財物を窃取しても、森林法197条の森林窃盗罪は成立しない(原判決維持)。
実務上の射程
特別法における刑法総則・各則規定の適用の可否が問題となる際の重要判例である。特に「みなす規定」や「処罰範囲の拡張規定」については、罪刑法定主義(類推解釈禁止)の観点から、準用規定の有無を厳格に判断すべきという指針を示す。答案上は、森林窃盗罪の客体(他人の財物)の検討において、刑法242条の適用の可否を否定する根拠として活用する。
事件番号: 昭和49(あ)1513 / 裁判年月日: 昭和50年3月20日 / 結論: 棄却
森林法一九七条にいう産物とは、無機物たると有機物たるとを問わず、森林から産出する一切の物をいい、岩石もこれに含まれる。