窃取の意思をもつて森林の産物である立木を伐採したときは、その伐採行為の終了と同時に森林窃盗罪の既遂となる。
森林窃盗罪の既遂の時期。
森林法197条
判旨
土地に生立する他人所有の樹木を窃取する意思で伐採した場合、伐採行為が終了し樹木を自己の支配内に移した時点で、窃盗罪は既遂に達する。
問題の所在(論点)
土地に生立する樹木を窃取する目的で伐採した場合、窃盗罪が既遂に達するのはどの時点か。伐採のみで足りるのか、あるいは搬出等の行為が必要かが問題となる。
規範
窃盗罪(刑法235条)の既遂時期は、行為者が目的物を自己の占有(事実上の支配)内に移した時点(占有の取得)をもって判断すべきである。土地の定着物である樹木については、伐採行為によって土地から切り離され、行為者の支配下に置かれたときに「窃取」が完了したものと解される。
重要事実
被告人は、土地に生立している他人所有の樹木を、不法領得の意思をもって伐採した。弁護人は事実誤認等を理由に上告したが、本判決は伐採行為に伴う窃盗罪の成立時期(既遂時期)についての判断を示したものである。
あてはめ
本件において、被告人は他人所有の樹木を窃取する意思で伐採を行っている。樹木は伐採されることで土地という不動産の一部から独立した動産となり、伐採行為を終了した時点で物理的に行為者の支配が及ぶ状態になったといえる。したがって、搬出等の後続行為を待たずとも、伐採行為の終了をもって樹木を自己の支配内に移したものと評価できる。
結論
樹木を窃取する意思で伐採したときは、伐採行為の終了と同時に樹木を自己の支配内に移したものとして、窃盗罪の既遂になる。
実務上の射程
本判決は不動産の一部を動産化して盗み出す事案における既遂時期を明確にしている。答案上は、占有の移転を「排他的支配の確立」と定義した上で、伐採行為がその支配を確立させる決定的行為であることを指摘する際に活用できる。樹木以外にも、建物の一部を取り外す行為や、鉱物の採掘等の事案に射程が及ぶ。
事件番号: 昭和50(あ)2349 / 裁判年月日: 昭和52年3月25日 / 結論: 棄却
刑法二四二条は、森林法一九七条の森林窃盗罪に適用されない。
事件番号: 昭和38(あ)1822 / 裁判年月日: 昭和39年8月28日 / 結論: 棄却
一 森林窃盗の犯人が伐採して森林内に放置していた伐採木を、仮処分決定の執行により執行吏が占有した後、右犯人がそのことを知りながら、さらにこれを自己の占有に移した場合には、森林窃盗のほか刑法第二三五条の窃盗罪が成立する。 二 申請人の錯誤により、地番を誤記して申請した仮処分決定にもとづき、目的物についてなされた差押の標示…