判旨
土地台帳上の氏名誤謬訂正許可により所有名義が変更されたとしても、それは名義上の変更にすぎず、直ちに実体法上の所有権の移転を生じさせるものではない。また、不法領得の意思を否定する事情としての権利の誤信についても、客観的な記録上の裏付けがない限り認められない。
問題の所在(論点)
1. 土地台帳上の氏名誤謬訂正許可による名義変更が、実体法上の所有権移転を伴うものといえるか。 2. 被告人らが本件立木の処分権限を有すると誤信していた事実は認められるか(不法領得の意思の成否)。
規範
土地台帳の登録内容は不動産の権利関係を公証する一資料ではあるが、実体法上の権利変動を直接生じさせるものではない。したがって、誤謬訂正等の手続による名義変更は、真実の所有権の帰属を直ちに決定するものではない。また、自らに処分権限があると誤信していた(違法性の意識の欠如または事実の錯誤)との主張については、具体的な証拠上の裏付けを要する。
重要事実
被告人両名が本件原野にある立木の処分行為等に関連して起訴された事案である。被告人らは、土地台帳上の氏名誤謬訂正許可によって、本件原野の所有権が個人共有(A外312名)からa部落所有に移転し、これに基づき被告人らに処分権限があったと主張して上告した。また、仮に権限がなかったとしても、処分権限があると誤信していたため不法領得の意思を欠く旨を主張した。
あてはめ
1. 原審は、土地台帳上の所有名義がA外312名からa部落へ変わった事実は認定しているが、それはあくまで台帳上の名義の変遷にすぎない。実体法上の所有権そのものが移転したことを意味するものではなく、被告人らに処分権限が発生したとはいえない。 2. 被告人らは処分権限の誤信を主張するが、記録を精査しても、そのような誤信があったと認めるべき客観的事実は存在しない。したがって、主観的態様に関する被告人側の主張は前提を欠く。
結論
本件各上告を棄却する。土地台帳上の名義変更のみをもって実体的な所有権移転を認めることはできず、また処分権限の誤信も認められないため、有罪とした原判決は妥当である。
実務上の射程
不動産や立木の窃盗・横領罪において、不動産登記や土地台帳等の公的帳簿上の記載と実体権利が乖離している場合に活用できる。特に「台帳上の名義変更=権利移転」という形式的な主張を否定する際の根拠となる。また、故意や不法領得の意思を否定するための「権利の誤信」の主張に対し、記録上の裏付けを要求する厳格な判断姿勢を示すものとして位置づけられる。
事件番号: 昭和50(あ)2349 / 裁判年月日: 昭和52年3月25日 / 結論: 棄却
刑法二四二条は、森林法一九七条の森林窃盗罪に適用されない。
事件番号: 昭和38(あ)1822 / 裁判年月日: 昭和39年8月28日 / 結論: 棄却
一 森林窃盗の犯人が伐採して森林内に放置していた伐採木を、仮処分決定の執行により執行吏が占有した後、右犯人がそのことを知りながら、さらにこれを自己の占有に移した場合には、森林窃盗のほか刑法第二三五条の窃盗罪が成立する。 二 申請人の錯誤により、地番を誤記して申請した仮処分決定にもとづき、目的物についてなされた差押の標示…