森林法第八四條第二號、五號の犯罪の成立に必要な犯意ありというには、被告人が保安林なることを認識し乍らその森林の樹木を許可なく伐採し或いはその伐採した樹木を原料として木炭を製造する事實を認識すれば足り、同法第九三條第二項の犯罪は、保安林なることを認識し乍ら許可なく之を開墾するの事實を認識すれば、同罪の成立に必要な犯意がありというべきである。
森林法違反罪の犯意
刑法38條1項,刑法38條3項,森林法84條2號,森林法84條5號,森林法93條2項
判旨
故意が認められるためには、処罰規定の対象となる客観的態様(保安林での無許可伐採・開墾等)を認識していれば足り、自己の行為が適法であると信じていたとしても、法律の不知として故意は阻却されない。
問題の所在(論点)
刑法38条3項に関連し、自己の行為を適法と信じていた場合(違法性の意識の欠如)が、構成要件的故意(犯意)を阻却するか。
規範
犯罪の成立に必要な犯意(故意)があるというためには、行為者が処罰規定の対象となる客観的事実(本件では保安林であることの認識、及び許可なく伐採・製炭・開墾する事実の認識)を認識していれば足りる。自己の行為が適法であると信じたとしても、それは単なる刑罰法規の不知にすぎず、犯意を阻却するものではない。
重要事実
被告人は、国有地解放の許可がないまま、保安林において樹木の伐採、木炭の製造、および土地の開墾を行った。被告人は事前に解放許可願書を提出したが却下されており、営林区署係官からも伐採等を禁止する注意を受けていた。一方で、被告人は製造した木炭の供出に伴う報奨物資の割当や、開墾助成金、住宅建築資材の交付を受けていたため、自らの行為が適法であると信じていたと主張した。
あてはめ
被告人は、本件土地が保安林であること、および許可なく伐採や開墾を行うという客観的事実を認識していた。当局から再三の却下や禁止の注意を受けていた事実に照らせば、客観的な犯罪事実の認識に欠けるところはない。住宅建築資材や助成金の交付等は、事実上の行為に対する報奨等にすぎず、客観的態様の認識を左右しない。したがって、適法と信じた点については単なる法の不知(法律の錯誤)にすぎず、故意は阻却されない。
結論
被告人には本件各犯罪の犯意が認められ、有罪とした原判決に違法はない。
実務上の射程
「法律の不知」が故意を阻却しないとする刑法38条3項の原則を確認した射程の長い判例である。行政上の助成等があっても、禁止規範の認識(客観的構成要件の認識)がある以上、違法性の錯誤を理由とする故意阻却は認められないことを示す。答案上は、違法性の意識の要否や法律の錯誤の論点において、判例の立場(制限的故意説に近い運用)を説明する際に引用する。
事件番号: 昭和26(れ)226 / 裁判年月日: 昭和26年11月15日 / 結論: 棄却
本件における起訴事実である森林窃盗の賍物収受と原判決の認定事実である森林窃盗とは、その基本的事実関係において同一性を失わないものと認められるか、論旨後段の不告不理の違反があるという主張も採ることを得ない。