本件第一審判決並びに原判決当時施行されていた森林法(明治四〇年法律第四三号)八三条にいわゆる森林であるかどうかは、犯行現場の実状によつて決すべきものであつて、地目の如何によるべきではない。従つて、原判決が本件窃盗の現場は林叢をなしていないと認定して第一審判決が本件につき前示森林法の規定を適用しなかつたことを是認したのは正当である。
森林法第八三条にいわゆる森林の意義
森林法(明治40年法律43号)83条
判旨
旧森林法83条に規定される「森林」に該当するか否かは、地目等の形式的基準ではなく、犯行現場の現況によって決すべきである。また、有罪判決の証拠理由において、証拠の標目を一括挙示したとしても、記録と照らし合わせることで事実認定の根拠が明らかであれば刑訴法335条1項に違反しない。
問題の所在(論点)
1. 旧森林法83条にいう「森林」の意義は、不動産登記法上の地目によって判断されるべきか、それとも犯行現場の実状によって判断されるべきか。 2. 判決の理由において、認定事実に対応する証拠を個別に示さず、標目を一括挙示する手法は、刑事訴訟法335条1項の理由不備に該当するか。
規範
1. 旧森林法83条の「森林」の該当性は、地目の如何に関わらず、犯行現場の実状(現況)によって判断されるべきである。 2. 刑事訴訟法335条1項が求める罪となるべき事実の証拠による証明の説示については、証拠の標目を一括して挙示する方法であっても、記録との照合により認定事実と証拠の関係が明確に判別できるのであれば、同項の要求を満たすものと解される。
重要事実
被告人が窃盗の犯行に及んだ場所が、旧森林法83条(森林における産物の窃取)の規定する「森林」に該当するかが争われた。第一審は、現場が林叢をなしていないという実状に基づき、同条の森林窃盗罪ではなく刑法の普通窃盗罪を適用した。また、第一審判決の理由中で証拠の標目が一括して挙示されていたため、被告人側がこれらを不服として上告した。
あてはめ
1. 本件窃盗の現場は、事実認定によれば「林叢(樹木が群生している状態)をなしていない」実状であった。森林法上の森林とは現況を重視すべき概念であるから、地目にかかわらず、林叢をなさない現場を森林とは認めず、森林窃盗罪の成立を否定した原判断は正当である。 2. 証拠の説示についても、本件の記録を照合すれば、どの証拠によってどの事実を認定したかが極めて明白である。このような状況下での一括挙示は、適法な証拠の説示として許容される。
結論
1. 旧森林法83条の「森林」は現場の実状により判断すべきであり、現場が林叢をなさない本件では適用されない。 2. 証拠の一括挙示も、認定事実との対応関係が明確であれば刑訴法335条1項に違反しない。
実務上の射程
特別刑法における用語の解釈が、形式的な行政上の区分(地目)ではなく実質的な現況に依拠することを示した事例である。また、刑訴法335条1項に関しては、判決書の理由記載の簡略化を一定の条件下で認める実務上の慣習を追認しており、答案作成上は「事実と証拠の関係が明白か」という基準で理由不備の有無を検討する際の根拠となる。
事件番号: 昭和27(あ)5675 / 裁判年月日: 昭和29年5月28日 / 結論: 棄却
有罪判決において、数個の犯罪事実につき各事項ごとに証拠の標目を示さず、多くの証拠の標目を一括して掲げても、必ずしも違法ではない。
事件番号: 昭和23(れ)147 / 裁判年月日: 昭和23年5月18日 / 結論: 棄却
有罪判決の證據説示としては判示事實を認定するに至つた證據を舉示すれば足りるのであつて其證據を取捨した理由を明示する必要はない