然し判文に事實認定の證憑となつた證據の内容を具體的に明示することは必ずしも必要でないが如何なる證據及び證據の如何なる部分によつて如何なる事實を認定したものかが判文記載の事實と相俟つて、その内容を知り得る程度に説明すれば足るものである。
證據説示の程度
刑訴法360條1項
判旨
判決書において罪となるべき事実を認定した理由を説明する際は、証拠の内容を具体的に明示することまでは要しない。判文記載の事実と相まって、いかなる証拠のいかなる部分によって事実を認定したかが客観的に知り得る程度に説明されていれば、理由不備の違法はない。
問題の所在(論点)
刑事判決における「理由の記載」において、証拠と事実の対応関係をどの程度具体的に説明すべきか。証拠内容の具体的な引用・明示が欠ける場合に、理由不備の違法(現行刑訴法335条1項、378条4号参照)となるか。
規範
判決書において罪となるべき事実の認定理由を説明するにあたっては、いかなる事実をいかなる証拠のいかなる部分によって認定したかが判文上明らかでなければならない。もっとも、証拠の内容を具体的に明示することまでは必ずしも必要ではなく、判文記載の事実と対照して、その認定の根拠(証拠及びその範囲)を外部から知り得る程度に説明すれば足りる。
重要事実
被告人が窃盗罪等の容疑で起訴された事案において、原判決は罪となるべき事実を認定する際、証拠の名称等を挙示したが、その具体的な証拠内容を詳細に判文に記載しなかった。これに対し、弁護側は「いかなる事実をいかなる証拠によって認定したかが判文上不明確である」として、理由不備(旧刑事訴訟法下の主張)および採証法則違反を理由に上告した。
あてはめ
原判決の摘示事実と挙示された証拠(被告人の司法警察官に対する第1回訊問調書、証人AおよびBの公判供述等)を対照すると、各証拠の中に判示事実と照応する記載や同趣旨の供述が存在することが確認できる。また、これらの証言と被害届の内容との間にも矛盾は存しない。したがって、判文上の記載によって「どの証拠のどの部分がどの事実に対応するか」を十分に知り得る状態にあるといえる。証拠内容を具体的に判文に書き写していなくとも、証拠の説明方法として欠けるところはない。
結論
原判決に理由不備の違法は認められない。いかなる事実にどの証拠が対応するかを判文から知り得る程度に説明されていれば、証拠内容を具体的に明示せずとも適法である。
実務上の射程
刑事訴訟法335条1項の「理由」の記載程度に関する基本判例である。実務上、証拠の標目を列記する「証拠の部」の記載において、事実との個別具体的な対応関係まで詳細に記述する必要はないが、認定事実との整合性が客観的に担保されている必要がある。答案上は、理由不備の主張に対する反論や、判決書の記載事項の適法性を論述する際の規範として活用できる。
事件番号: 昭和24(れ)2483 / 裁判年月日: 昭和25年2月9日 / 結論: 棄却
原判決が各窃盜の事實を認定する證據中に所論の窃盜被害追加届を舉示していること及び論旨に指摘の昭和二四年四月二六日の原審第二回公判調書中の記載部分に「各盜難被害届」「盜難被害品追加届」の記載は存在するが所論の盜難被害追加届の記載が存しないことは所論のとおりである。しかし所論の盜難被害追加届に「…盜まれた品物は一、イデ…ン…