判旨
判決における証拠説明において、証拠の内容を逐一具体的に転記する必要はなく、判示事実と照応してその内容を特定し得る程度に引用されていれば、証拠説明として欠けるところはない。
問題の所在(論点)
判決書における証拠の説明として、証拠書類の内容をどの程度具体的に記載する必要があるか。証拠の内容を詳細に転記せず、判示事実との照応関係を示すのみで足りるかが問題となった。
規範
判決書における証拠の説明は、記載内容を逐一具体的に転記(詳述)することまでは要しない。判示された犯罪事実と照応させることにより、その内容が客観的に特定し得る程度の引用がなされていれば、証拠の摘示として適法かつ十分である。
重要事実
被告人が強窃盗の罪に問われた事案において、第一審判決の証拠説明に「被害者A提出の強窃盗被害顛末書中、判示第二の(一)(二)に照応する盗難被害顛末の記載」との表現が用いられた。弁護人は、このような記載では内容が不明確であり、証拠説明として不十分であるとして、具体的な被害内容を判決文に明示すべきであると主張して上告した。
あてはめ
本件判決における証拠説明は、特定の被害者(A)が提出した「強窃盗被害顛末書」という書面のうち、判決が認定した事実(判示第二の(一)(二))に該当する部分を特定する形で行われている。これは、判示事実と照応させることで、どの証拠のどの部分が有罪の根拠となったかを客観的に特定し得る記載といえる。したがって、証拠の内容を逐一転記せずとも、証拠説明としての機能を果たしていると解される。
結論
証拠の内容を具体的に転記する必要はなく、判示事実と照応して特定し得る程度の引用があれば足りるため、本件の証拠説明に欠陥はない。
実務上の射程
刑事訴訟法における判決書の証拠摘示(現行刑訴法335条1項)の程度に関する基準を示す。実務上、証拠の標目のみならず、事実との対応関係が判別できる程度に特定されていれば、理由不備(刑訴法378条4号)には当たらないことを論証する際に活用できる。
事件番号: 昭和26(あ)2507 / 裁判年月日: 昭和26年11月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審判決が、第1審判決の示した証拠によって犯罪事実を認定できると判示した場合は、実質的に控訴趣意に対する判断を示したものと解される。 第1 事案の概要:被告人は窃盗罪に問われ、第1審で有罪判決を受けた。被告人はこれに対し控訴を申し立てたが、控訴審判決(原判決)は第1審判決が挙げた証拠を引用する形…